赤ちゃんを抱っこするように遠隔面会用の機器を持つ母親。左は父親=岩手県北上市の北上済生会病院で2026年3月7日午前10時41分、山田英之撮影

 赤ちゃんの鼓動や体温を感じたい――。新生児集中治療室(NICU)に入院する赤ちゃんの両親の願いをかなえる新しいオンライン遠隔面会の実証実験が、岩手県で実施されている。県内の面積が広く、積雪や兄弟姉妹の育児、仕事などの事情で頻繁に病院に来られない家族の心理的なつながりを支援するのが目的だ。【山田英之】

 妊娠28週未満で生まれた超早産児などに対する特別な医療的ケアは、岩手県内では岩手医科大付属病院(岩手県矢巾町)しかできない。実験は2月から3月末までの予定で、岩手医大やNTT東日本などが参加。祖父母や兄弟姉妹を含む年齢の異なる家族も参加して、利用しやすさを検証する。2、3年かけて実用化を目指す。

 医療の高度化による超早産児や2500グラム未満で生まれた低出生体重児の生存率向上が、実験の背景にある。一方で、NICUの長期入院児は増加傾向にある。退院まで3~6カ月かかり、先天性の病気があると1年以上かかる場合もある。NICUの対面面会は人数や時間が制限され、感染症の流行によって面会できないこともある。長期入院による親子の心理的な分断も懸念されている。

遠隔面会用の機器に映し出された赤ちゃん=岩手県北上市の北上済生会病院で2026年3月7日午前10時45分、山田英之撮影

 実験では、半球型の機器(直径16センチ、重さ400グラム)のモニターに岩手医大病院に入院する赤ちゃんの様子を動画で映し出す。赤ちゃんの心拍に合わせて、心臓の鼓動を模した「トクン、トクン」という振動を機器で再生する。

 NICUで常時計測する赤ちゃんの心電図を活用。心拍に合わせて点滅する心電図の光をセンサーで感知して、振動に変換する。遠隔地で面会する両親らは、機器を包み込むように持つことで、わが子の心拍を感じ、抱っこしているような感覚を味わえる。

 家族の声はマイクを通してNICUに聞こえるため、呼びかけに反応する様子をモニターで確認。赤ちゃんの体温に近い温度までヒーターで機器を温かくすることもできる。「触れたいのに触れられない」「何もしてあげられない」という家族の葛藤を軽減し、親子の絆を深める狙いがある。

岩手医科大付属病院の阿部志津香医師=岩手県北上市の北上済生会病院で2026年3月7日午前11時12分、山田英之撮影

 実験では、NICUに入院する赤ちゃんの家族が、自宅や近くの病院で遠隔面会を体験。北上済生会病院(岩手県北上市)で今月7日、遠隔面会をした両親は機器から伝わる振動を感じ、生後1カ月のわが子の様子をいとおしく見守った。母親は「声が届いていることを実感できた」と語った。

 これまで実験に参加した他の父母からは「子どもの姿と心拍が一体で感じられ、安心感があった」「さみしさが和らいだ」などの声が寄せられている。

 岩手医大病院の阿部志津香医師は「NICUには直接触れることができない子が入院している。遠隔面会の機器があれば、家族が子どもの鼓動を感じて生きていることを実感できる」と話す。NTT東日本岩手支店の担当課長、太野雅則さん(56)は「赤ちゃんと家族を心理的につなぐ支援をしたい」と語った。

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