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<新たに発見されたコーヒーに含まれる3つの成分の活用が期待されている...>

コーヒー豆に含まれる化合物が、糖尿病の新たな治療法につながる可能性があることが明らかになった。

特に3種類の化合物が、炭水化物の分解に関わる酵素「α-グルコシダーゼ」に対して強い阻害効果を示した。


これにより、2型糖尿病に特化した機能性食品成分の開発につながる可能性があると、中国の昆明植物研究所の研究チームは述べている。

アメリカ人の約10人に1人(3800万人以上)が糖尿病を患っており、そのうち90~95%が2型糖尿病だ。これはインスリンが正常に機能しない、もしくが十分な量が分泌されない場合に起こる。

現在の糖尿病の一般的な治療法は、血糖値の測定と管理を通じて合併症の予防や進行を遅らせることが基本となっている。

バランスの取れた食生活、適度な運動、十分な睡眠が症状の管理に有効な場合もあるが、状況によってはメトホルミンやインスリンなどの薬剤を併用する。

今回の最新研究で、コーヒーに含まれる機能性成分に抗糖尿病の効果の可能性が示され、その成分の理解をさらに深める手がかりになると研究チームは述べる。

機能性食品とは、栄養価に加えて抗酸化作用、神経保護、血糖降下などの健康効果が科学的根拠に基づいて期待される、生理活性物質を含む食品のことだ。研究チームは論文の中で次のように述べている。

「コーヒーに含まれるジテルペン類(diterpenes)は、がん、肥満、糖尿病など、さまざまな疾患の予防効果が期待される特性を有している。ただし、焙煎豆の化学組成は非常に複雑であるため、有効成分の特定や活性評価はこれまで困難であった」

こうした課題に対して、研究者チームは「NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)」や「LC-MS/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)」といった高度な分析手法を用いて、コーヒーのように化学的に多様な食品から機能性分子の発見に挑んでいる。


栄養アプリ「Lifesum」の主任栄養士である、シグネ・スヴァンフェルト氏は本誌に次のように語る。

「理論的には、機能性食品の成分が血糖コントロールに役立つ可能性はありますが、実際の効果は有効な摂取量や安全性、ヒトにおける吸収性などを明らかにしなければなりません。

多くの実験室レベルでの結果は、実際の健康効果にはつながりません。だからこそ、こうした成分はあくまで『補完的』なものであって、食事や運動、薬の代替にはならないのです」

本研究では、ロブスタ種(カネフォラ種)、リベリカ種、エクセルサ種と並ぶ主要なコーヒー品種の1つであるアラビカ種の焙煎コーヒー豆から、ジテルペンエステル(diterpene esters)という生理活性物質を効率よく同定する三段階のアプローチを開発。

今回、分離されたのはコーヒー豆から直接得られた分子であって、抽出液(飲用のコーヒー)ではないとスヴァンフェルト氏は補足した上で次のように述べる。

「これまでの大規模調査では、コーヒーの常飲によって、2型糖尿病の発症リスクの低下や、糖尿病患者の生存率向上と関連していることが報告されています。ですから、カフェイン以外の成分にも有益な作用がある可能性があります」

今回、新たに発見された3種類のジテルペン化合物は「カフアルデヒドA、B、C(caffaldehydes A-C)」と名付けられ、標準薬である「アカルボース」よりも高い阻害活性を示した(アカルボースは、食事や薬剤の見直しでも血糖値が改善しない2型糖尿病患者に用いられ、食後の急激な血糖上昇を抑える働きを持つ)。


既存の化合物とは異なる脂肪酸を含むことから、その新規性が確認されたこの成果は、焙煎コーヒーのような複雑な食品構造の中から、構造的に多様で生理活性を持つ化合物を見つけ出す方法として有効であることを示している。

今後は、コーヒー由来の新たな機能性食品成分や栄養補助食品として、血糖コントロールへの応用が期待される。

ただし、本研究で特定された新成分が現時点では、ヒトにおける効果が証明されていないことをスヴァンフェルト氏は強調する。

また、コーヒーを飲むこと自体は健康的な生活習慣の一部として問題はなく、既存の治療の「補助的な選択肢」になり得るとしつつも、コーヒーに含まれる成分が血糖測定機器や薬、生活習慣の改善に代わるものではなく、糖尿病の治療法と見なすべきではないとも釘を刺す。

研究チームは、今回の手法をその他の構造的に複雑な食品にも応用し、迅速な生理活性成分のスクリーニング技術として発展させる可能性を示唆している。

そして新たに特定された生物活性を明らかにし、安全性や有効性を動物実験などで検証する予定だ。

なお、カフェインの許容量には個人差がある。一般的に、1日あたり400mg(コーヒー3〜4杯分)までは成人にとって安全とされるが、不安感や不眠、消化不良などの副作用が少量でも生じる人もいる。

【参考文献】
Hu, G., Quan, C., Al-Romaima, A., Dai, H., Qiu, M., Hu, G., Quan, C., Al-Romaima, A., Dai, H., & Qiu, M. (2024). Bioactive oriented discovery of diterpenoids in Coffea arabica basing on 1D NMR and LC-MS/MS molecular network. Beverage Plant Research, 5(1).

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