佐賀県鳥栖市の佐藤和威(かずい)さん(26)が市立中1年だった2012年に約7カ月にわたって複数の同級生から暴力を受け多額の現金を脅し取られた問題で、市教委の第三者委員会(委員長=松下一世・佐賀大教育学部非常勤講師)は26日、「甚大な肉体的、精神的苦痛を与える極めて深刻ないじめ」に該当するとする報告書をまとめ、市教委に答申した。被害発生から14年たって第三者委がいじめを認めるのは異例。佐藤さんが同級生や市などに損害賠償を求めた訴訟では司法は市の法的責任を認めなかったが、第三者委は事実確認を徹底しなかった学校や市教委の対応を厳しく批判した。
佐藤さんは12年4月の入学直後から学校の内外で、エアガンで撃たれる▽「プロレスごっこ」と称して暴力を受ける▽カッターナイフで脅される▽顔に殺虫剤のスプレーをかけられる▽金銭を脅し取られる――などの行為を複数の同級生から受けた。学校が被害を把握した12年10月以降、卒業まで学校に通えなくなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
佐藤さんが15年に起こした訴訟で、福岡高裁は21年、こうした行為を「継続的ないじめ」と認定し、同級生8人に慰謝料などの支払いを命じた。一方、市への賠償請求は、学校がいじめを認識できたとは言えないなどとして認めなかった。最高裁は22年7月、佐藤さんの上告を退け、高裁判決が確定した。
佐藤さんは22年9月、市教委に第三者委の設置を改めて要請。市教委はようやくいじめ防止対策推進法上の「重大事態」と認め、諮問を受けた第三者委が23年6月から訴訟記録などの資料精査や、関係する教員、生徒、佐藤さんからの聞き取り調査などをした。
第三者委は報告書で、佐藤さんは抑圧的な力関係の中で複数の同級生から教室内で日常的に暴力を受け、被害は放課後や休日にも及んでいたと認定。佐藤さんがいじめの記憶のフラッシュバックに苦しみPTSDと診断されたことなどを踏まえ、現在まで続く深刻な心理的影響を受けたと判断した。
さらに、学校側は同級生の行為を「悪ふざけ」と捉えていじめを見逃し、被害の重大性も十分認識せず、徹底した事実確認をしないまま同級生に形式的な謝罪をさせたなどと指摘。対応が「極めて不適切」で、佐藤さんの精神症状をさらに悪化させたとした。
市教委の対応についても、いじめによる長期欠席などの疑いがあれば「重大事態」として調査するよう義務付けたいじめ防対法の施行(13年9月)の直後から佐藤さんが第三者委による調査を求めたのに市教委が拒否したとし、「役割の重大性を認識せず、必要な対応をする姿勢に欠けていた」と断じた。【樋口岳大、成松秋穂】
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