一見すると首に異常は見られないが、正面を向くと…… @stufflaurendoes_ / TikTok

<女性がカメラに向かって話すだけの動画を見た人たちから、「首に異常がある」というコメントが殺到する事態に。本人も気付いていなかった病気の兆候とは?>

2人の子どもを持つ母親がTikTokに動画を投稿したところ、まったく予想していなかった反応が寄せられた。赤ん坊を抱いた彼女がカメラに向かって語り掛けながら、新しい玄関マットを紹介する動画なのだが、動画に映る彼女の様子を見た人たちから、彼女の健康上の問題を指摘する声が相次いだのだ。

■【写真】【動画】女性配信者の動画にツッコミ殺到...「体に表れた異変」へのネット民の指摘で病気を発見

夫がネット通販で買ったユニークな玄関マットを紹介する動画を投稿した当初、ローレン・ボックホルト(31歳)はこの動画が自分の人生を大きく変えるものになるとは思ってもいなかった。昨年8月、彼女は最初にInstagramにこの動画を投稿し、次いで今年5月になってTikTok(@stufflaurendoes_)にも投稿した。

動画はInstagramでバズったものの、視聴者たちからの反応は特に変わったものではなかった。しかしTikTokに投稿すると、まったく違った反応が返ってきた。

テキサス州サンアントニオ在住のボックホルトは本誌に対し、TikTokで180万回以上再生されて注目を集めたことで「知らない人からもコメントが届くようになった」と語った。そして彼女のもとに、甲状腺に関する懸念を訴えるメッセージが殺到したのだった。

思い返すと「妊娠する以前から問題が」

「多くは甲状腺の病気やがんを経験した女性たち、あるいはそういった病気を患った女性の夫や息子たちだった」。動画でボックホルトは、赤ちゃんを抱きながらカメラに向かって話している。その彼女の首の腫れが目立っているとして、多くのユーザーが医師の診察を受けるよう勧めてきたのだ。

「妊娠中に血液検査を受けた際、妊娠初期に1つの甲状腺の数値が正常よりも低く出た。そのときは助産師と話し合って、特に関連する症状も見られなかったので、経過観察にするということになった」とボックホルトは言う。

「最初は疑う気持ちもあったが、助産師を信頼していた。今は、甲状腺とその機能障害について学んだことで、妊娠よりずっと前から問題を抱えていたんだと思うようになった。ただ自分の生活スタイルに慣れすぎていて気付かなかったのだと思う」

甲状腺は首の前側にある蝶のような形をした腺で、血圧、体温、心拍、代謝などを調整する重要なホルモンを分泌する。甲状腺には、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、甲状腺機能低下症、腫瘍、がん、産後の甲状腺炎など、さまざまな病気の可能性がある。

コロンビア大学アービング医療センターの内科准教授サリラ・クーラは、甲状腺の疾患は非常に多様な症状があると本誌に語った。甲状腺機能亢進症は新陳代謝が過剰になり、機能低下症は身体機能の低下を招く。ほかの多くの病気と症状が似ていることもあり、甲状腺の異常は「見落とされやすい」とクーラは指摘する。

抜け毛、爪のもろさ、片頭痛、月経周期の変化...

「甲状腺が腫れることによる症状もある」とクーラは言う。「かなり大きくなった場合は、呼吸や嚥下が困難になることもあるが、そこまで大きくるのはまれなケースだ」

またクラ氏によれば、「妊娠後に甲状腺が炎症を起こすことがあり、これは甲状腺炎と呼ばれる。腫れを伴うことは多くないが、炎症によって甲状腺が傷つくことがある。それによって甲状腺機能亢進症の症状が出たり、甲状腺ホルモンの産生低下を招いたりする」

動画を見た人たちから心配のコメントが届き始めた当初、ボックホルトは戸惑ったという。思い当たる症状は何もないと思っていたからだ。

しかしよく考えてみると、妊娠や産後、あるいは授乳のせいだと思い込んでいた多くの「異変」があった。抜け毛、爪のもろさ、偏頭痛、短い月経周期、脳の霧(ブレインフォグ)、関節痛、動悸などだ。出産をきっかけに始まった症状もあれば、子どもの頃から続いていたものもあったという。

振り返ってみると、妊娠や出産は症状を「確実に悪化させた」としながらも、原因そのものではなかったと思うようになった。時間が経つにつれて彼女は「少し被害妄想的になり」、しょっちゅう首を触るようになったという。数か月後、夫の勧めもあって医師の診断を受けることに決めた。

「インターネットで知らない人たちに甲状腺を検査すべきだと言われて、自分でもおかしいと思いながらも来たのだと医師に伝えた」とボックホルトは言う。「医師はすぐに私の首を触診し、『TikTokの人たちの意見に賛成だ』と言った」

「よくあること」で済ませてはいけない

彼女は甲状腺の精密検査を受け、記事執筆時点では診断結果が出るのを待っている段階だ。現在ではこの経験をSNSで発信し続けており、同じような症状を抱える人々に向けて、症状に関する理解を深めて行動を起こすことの大切さを伝えたいと語る。「よくあること」で済ませていいとは限らないと、彼女は指摘する。

もしTikTokであのような反応がなければ、彼女は現在も自分の症状を自覚しないままだったかもしれない。「この短期間で本当に多くのことを学んだ。甲状腺の病気がこれほど一般的で、放置すればどんなに危険か全く知らなかった。友人でも、家族でも、見知らぬ人でも、もし違和感を覚えたら、ためらわずに伝えてあげてほしい。命を救えるかもしれないのだから」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。