大津市役所=濱弘明撮影

 大津市が市立幼稚園の給与体系を見直し保育士の給与水準に合わせる条例改正案について、市議会は継続審査を決めた。市民の目が厳しく注がれている中、市と市議会には抜本的な改正見直しを含む検討と議論を望みたい。

 条例改正案は、大津市が2年連続で全国ワーストとなっている待機児童の問題と幼稚園児の減少を背景に、市議会2月通常会議に提案された。幼稚園教員と保育士を一本化して「教育保育職」を新設し、「職員を柔軟に配置する上で必要な対応」と佐藤健司市長は市議会で答弁した。

 社会が「賃上げ」を重視する中での「賃下げ」案に、世論は大きく反応した。市コールセンターやホームページにある「市長への提言箱」には、本案に関する意見が25日までに約240件、市広報課の公式X(旧ツイッター)にも100件以上の意見が寄せられた。各社の報道を受けて「賃下げ」を批判する意見が多いという。

 待機児童の解消は喫緊の課題だ。一方で市内の幼稚園児が5年間で35%減少していることから幼稚園再編も不可避で市内28幼稚園の再編を検討する委員会が2025年度に始まっている。市は「条例改正とは別」と説明するが、近々パブリックコメント募集の予告が公表される予定だ。

 今後労使交渉が再開しても改正案は俎上(そじょう)に載ったままの状態。市側は今後、「働く環境の整備や事務負担軽減を図る」としているが、組合側は「対等な交渉にならない」と主張する。

 2月中旬に話を聞いた幼稚園のベテラン教員に継続審査となった感想を聞いたところ「賃金の引き下げはそのままに、人員配置の見直しや説明会の開催などで乗り切ろうとしている点に大きな違和感がある。市が就学前教育を本気で重視しているとは到底感じられない」と返ってきた。

 取材を通して私が感じた一番の問題は、「職員の柔軟な配置」策も幼稚園再編についても、現場で納得いく説明がなされていない点だ。職員が大津市で働き続けることに不安を抱くのは当然だ。

 継続審査が難航した場合は、市が改正案を取り下げ、現場の不安を取り除いてほしい。そのうえで、幼稚園再編計画を含めて市民に未来を示すことが必要ではないか。

 大津市には幼稚園教育の長い歴史があることも今回知った。地域と市立幼稚園の「近さ」は、大津市の掛け替えのない財産だ。私の自宅マンションの回覧板には、地元幼稚園の通信が挟まれている。職業柄転勤を繰り返してきたが他では見たことがなく、地域住民の優しい目線の表れと感じている。市はこの優しさを生かす着地点を目指してほしい。【岸桂子】

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