変化を適切に認識できると早期診断に役立つ(写真はイメージです) sabinevanerp-Pixabay

<認知症の初期兆候は、記憶力の低下だけではない。それより早く現れる日常生活のサインがあった>

認知症の初期兆候といえば、多くの人が「記憶力の低下」を思い浮かべるだろう。しかし、臨床医や研究者の間では、それよりも早く現れる可能性のある、もう1つの認知機能の変化に注目すべきだという声が高まっている。それは、日常の定期検診で行われるような一般的な検査では見落とされがちな変化だ。

スウォンジー大学の神経心理学者、アンドレア・テイルズは近著の中で、さまざまなタイプの認知症に共通して見られるのが「注意力の変化」であり、場合によっては明らかな記憶障害よりも先に現れることがあると論じている。

テイルズが本誌に語ったところによれば、これまで注意力が軽視されてきた背景には、それが記憶力に比べて一般の人々には認識しにくく、説明もしづらいという事情がある。

「誰もが『記憶』とは何かを知っており、その変化を説明したり報告したりすることができる」とテイルズは言う。一方で、注意力については、記憶と同じようにいくつかの「タイプ」があることさえ、世間にはほとんど理解されていない。

この認識の差は重要だ。医師に対して「記憶力が不安だ」と相談するのは容易だが、「注意力の機能に問題がある気がする」と伝えるのは、よりハードルが高いからだ。

では、日常生活における注意力の変化とは、具体的にどのようなものなのだろうか。テイルズは、主観的にどのような変化を感じるのかについてはまだ研究段階であり、また注意力や記憶力の変化が必ずしも即座に認知症を意味するわけではないと強調した上で、次のように説明した。

「注意が散漫になりやすかったり、集中するのが難しくなったりする。あるいは、物が散らかった場所で探し物をするのが困難になる、歩きながら話すといった『2つの作業を同時にこなす』ことができない、1つのことから別のことへ意識を切り替えられないといった症状を訴える人もいる。注意や集中力にムラが出たり、事前の計画立案や意思決定ができなくなったりする場合もある」

懸念されるのは、記憶力に重きを置いたスクリーニング検査だけでは、初期の注意力障害が見逃されてしまう可能性がある点だ。たとえば、広く普及しているミニメンタルステート検査(MMSE)は、初期の認知機能の変化には感度が低く、評価できる領域も限られている。

注意力の中でも特に「実行機能」については、すでに医療現場で真剣に捉えられているとテイルズは指摘する。しかし、その他のあまり知られていない側面についても、特に初期段階においてはもっと重視されるべきだと彼女は考えている。

「こうした変化を自覚することは、早期診断に役立つ。また、その人の生活の質や日常生活の動作を評価する際に注意力の変化を適切に測定できれば、治療の過程においても大きな助けとなるだろう」

認識が高まれば、家族もより的確なサポートができるようになる。たとえば、物がたくさんある場所で探し物をするのが苦手な人に対しては、部屋の片づけをして視覚的なノイズを減らすだけで、日常生活の負担を軽減できる。

もし自分自身や大切な人に不安を感じるなら、特にその変化が最近現れたものであったり、悪化していたり、日常生活に支障をきたしていたりする場合は、医療専門家に相談することをテイルズは推奨している。

Reference

Tales, A., Thomas, C., Littlemore, K., & Brown, R. (2026). A New Approach to Dementia: Examining Attention Impairment. Routledge. https://www.routledge.com/A-New-Approach-to-Dementia-Examining-Attention-Impairment/Tales-Thomas-Littlemore-Brown/p/book/9781041006152

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