講話集「香川県伝統の食文化『讃岐うどん』の継承と発展」=高松市で2026年4月1日午前8時4分、佐々木雅彦撮影

 「うどん県に改名いたします」というPR映像を香川県が2011年に観光情報サイトで公開した時、「讃岐うどんの香川だけが『うどん県』を名乗ったら、他のうどん名産地からクレームが来るのでは」と心配した。

 しかしそれは杞憂(きゆう)だった。むしろ、サイトにアクセスが殺到するほど予想以上の反響を呼んだ。なぜどこも文句を言わなかったのだろうか――。

 そんな書き出しで始まる講話集「香川県伝統の食文化 『讃岐うどん』の継承と発展」(美巧社)を「さぬきうどん研究会」顧問の諏訪輝生さん(78)=高松市=が自費出版した。

 諏訪さんは、香川大農学部を拠点とし、讃岐うどんの伝統を継承し発展を目指す「さぬきうどん研究会」の2代目会長も務めた。毎年の県職員初任者研修で讃岐うどんを食文化として講義するなど、さまざまな団体で講演してきた。今回の講話集では、小麦栽培の起源▽麺類の日本伝来▽日本でのうどん誕生▽香川でのうどん食習慣▽讃岐うどんは食文化――などの面からまとめた。

堂々と名乗れる理由、データで裏付け

 JR四国グループの讃岐うどん製造販売会社「めりけんや」で社長を務め、首都圏進出に尽力した。全国で讃岐うどんの売り込みに奮闘する中で、各地に自慢のご当地うどんがあることを実感していた。

讃岐うどんの講話集を出版した「さぬきうどん研究会」顧問の諏訪輝生さん=高松市で2026年3月27日午後4時28分、佐々木雅彦撮影

 その中で、香川が「うどん県」と堂々と名乗れる理由は何か。諏訪さんはさまざまな調査結果から、その裏付けデータを見つけていった。

 講話集では主に次のような数字を紹介している。①県民がうどんを食べる頻度は週1回以上が72%、週2~3回以上が25%(22年調査)②都道府県庁所在地でうどん・そばの家庭内の年間支出額トップは高松市の1万764円(24年調査)③都道府県別で人口1万人当たりのうどん店数トップは香川の5・02店(21年調査)。

 讃岐うどんの名称が全国的に浸透していく経緯も考察し、3段階に分けた。第1次ブームは1970年の大阪万博に出店したことで、全国に知られるようになった。

 第2次は瀬戸大橋の建設に携わった工事関係者が本場で食べて全国に口コミで伝わったことがきっかけ。88年の開通後には香川県内のうどん店に観光客が押し寄せた。89年には県内タウン誌が怪しいうどん店の探訪記「ゲリラうどん通ごっこ」の連載を始めた。店巡りの面白さが全国に発信され、ブームがさらに拡大した。

 第3次の起こりは2002年。複数の讃岐うどんチェーン店が首都圏に相次いで初出店。できたて麺に客が具を選んでトッピングするセルフ店が評判を呼び、「うどん県」を名乗れるだけの土台が築かれていったと分析している。

 讃岐うどんは今や、国内で知らない人はいないほどだ。「うどんは昔、讃岐人にとって、凶作の時に飢えをしのぐための食べ物だった。時代の進展とともに、なくてはならないものになった」。諏訪さんは讃岐うどんの歴史を振り返り、「香川独自の伝統の食文化であることを、県内外の人にもっと知ってほしい」と願う。

 講話集は2200円。インターネット通販「アマゾン」や香川県内の一般書店などで購入できる。【佐々木雅彦】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。