ハンドブック「白血病と言われたら」の第7版上巻(左)と下巻=東京都千代田区で2025年5月26日、渡辺諒撮影

 白血病と診断され不安になる本人や家族に向けたハンドブック「白血病と言われたら」(NPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会)の第7版が発行された。1999年の初版から26年にわたって患者に寄り添ってきた。

「欲しい情報」で心構え

 「前向きになれる情報が書かれ、自分も頑張ろうと背中を押してもらった」

 東京都内に住む小松崎辰哉さん(61)は2022年5月に受けた勤務先の健康診断で、白血球と血小板の値が低く要再検査に。血液内科を受診し、経過観察を続けていたが、5カ月後の精密検査で、白血病に進行する可能性がある「骨髄異形成症候群」と診断された。

 この時、将来の骨髄移植に備え、骨髄バンクに登録し、ハンドブックの第6版を手にした。12月に入院し、抗がん剤治療を開始。その際にじっくり読んだことで病気への理解や心構えができたという。

 「体験談や患者へのメッセージ、治療費のことも書いてあり、欲しい情報がまとまっていた。インターネットではネガティブな情報が目につき、必要な情報を探し出す手間も患者にとっては負担だった」と振り返る。

 急性骨髄性白血病に移行し、抗がん剤で一時は回復したものの、24年5月に再発した。骨髄移植を経て、現在は自宅療養を続けている。第7版では、協議会からの依頼で執筆陣に加わった。

 「医師とのコミュニケーションを大切にして」とのテーマで「メモを見ながら(担当医師に)質問を行い、疑問な点などを解消」などと体験談をまとめた。小松崎さんは「担当医は何人もの患者を受け持って時間がないので、質問を事前にまとめて感情的にならずに聞いてほしい」との思いを込めた。

 闘病中、医師からの説明は治療方針や副作用などのリスクが中心になる。小松崎さんは「患者が知りたいのは、社会復帰や自分の体がどうなるか、再発の有無だ。それらについて医師は自ら話してくれないので、遠慮せずに聞いた方がいい」と語る。不安な思いを減らすことが、より良い闘病生活を送る一つのコツだと、新たな患者にエールを送る。

専門医らが無報酬で執筆、編集も手弁当

 ハンドブックは1999年8月に初版が発行された。協議会が96年に始めた白血病フリーダイヤルの相談経験を踏まえ、多くの患者や家族が知りたがっている情報を届けるのが狙いだ。専門医らが無報酬で執筆し、編集作業を担う委員も手弁当で改訂を続けてきた。

 今年5月にまとめた第7版は、上巻に医師や看護師、骨髄移植を受けた患者とその家族、提供したドナーが助言や思いを掲載。医療費控除や公的な助成制度などの解説もある。患者が読んですぐに役立つ情報が184ページにわたって掲載されている。

ハンドブック「白血病と言われたら」の第7版(手前)と過去に発行されたハンドブック=東京都千代田区で2025年7月9日、渡辺諒撮影

 下巻では、さまざまな種類の白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液疾患について、それぞれの専門家が治療法や検査、予後などについて272ページで解説している。総勢50人の専門家が執筆に協力した。

 編集長で協議会副理事長の若木換(あらた)さんは「下巻は専門的な内容になりがちで、イラストや図表類を多用するなど、第6版よりもさらに分かりやすくなるように工夫した」と説明する。

 治療法や薬の変化に合わせ、約5年ごとに版を改訂している。若木さんは「白血病と診断されて不安にならない人はいない。最新の内容が掲載されているハンドブックがそうした人たちの支えになってくれればうれしい」と話す。

 上下巻、税込み送料別で各1100円。3000部ずつ用意した。協議会のホームページ(https://www.marrow.or.jp/)から無料でダウンロードできる。日本造血・免疫細胞療法学会が認定する病院には3冊ずつ置かれている。

 購入の問い合わせは、協議会事務局(03・5823・6360、平日午前10時~午後5時)。フリーダイヤル(0120・81・5929、土曜午前10時~午後4時)での相談も実施している。【渡辺諒】

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