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<スリムなだけでなく、締まり、鉄のように硬く...強くなることを怖れてはいけない>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「7章 ラテラルチェーン・トレーニング」より一部編集・抜粋。


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シックスパック(腹直筋)はフィットネス業界にゴールドラッシュをもたらしたが、それに次ぐミッドセクションの新たな金脈が注目を集め始めている。

シックスパックの両側を走るコードのようなかたちをした「腹斜筋(ふくしゃきん)」だ。新し物好きは、誰もがこの小さな筋肉をトレーニングしたがるようになっている。

【図】腹斜筋とは「ここ」 を見る

糖衣で覆わなければ完成しないケーキのように、腹斜筋を鍛えない限りミッドセクションは完成しない。そんな強迫観念をメディアが煽っている。

審美性を求めて、こんなにも小さな筋肉を分離して鍛えようとする情熱には、わたしでなくても病的なものを感じるだろう。

ヒトという種がナルシシズムに溺れやすいこと、膨大な時間とエネルギーを的外れで意味がない行為に費やす種であることを思い出させる。

美を求めるモチベーションを肯定的にとらえたとしても、実際にやっているトレーニングを見ると、確実に悪態をつきたくなる。

パーソナルトレーナーやコーチが推奨するエクササイズといえば、きまって、サイド・クランチ、ツイスティング・クランチ、サイドケーブル・クランチだ。そこに、ちゃちな「玩具」が加わるだけ。

これらのトレーニングが的外れなのは、小さな腹斜筋をわざわざ分離してトレーニングするからだ。

腹斜筋は、鎖のようにつながっている筋肉群の中のひとつであり、そのまとまりの中で機能するようにつくられている。

そこを分離して鍛えても意味がない。クランチをやっても効果がないのは、それが筋力エクササイズではなく、抵抗が小さい収縮エクササイズだからだ。


 

運動している気分にさせてはくれるが、効果はゼロに近い(大腿四頭筋を「緊張」させ、その緊張を解くエクササイズを20レップス3セット、それを週3回やって、何か起こるだろうか? 何も。膝を曲げて、しゃがみ込まない限り、大腿四頭筋は変化しない)。

腹斜筋を強く硬くしたいなら、4つの原則に従って動作させる必要がある。


・抵抗として体重を使う。

・筋肉群をユニットとして鍛えるエクササイズを用いる。

・ハードにワークする。

・よりタフなエクササイズに少しずつステップアップしていく。

トレーニングの基礎にこの4原則を置けば、どの筋肉群であっても、極限まで開発することができる。強くなることを怖れてはいけない。

現代の腹斜筋神話

強くなることを怖れるな。これは、ちょっと軽薄に聞こえる警句かもしれない。しかし、言葉の響きからくる印象ほど軽薄なものではない。

信じられないかもしれないが、世の中には、腹斜筋をトレーニングすることを死ぬほど怖れる人種がいるからだ。ウエストが厚くなり、「逆三角形」の体型が壊れ、均整が崩れるのでは......というのがその理由だ。

それこそ軽薄な考えだ。ウエストラインを膨らませ、ずんぐりとしたラブ・ハンドル(腹の贅肉)をつくるものは2つ。

ひとつは、もちろん過剰な体脂肪だ。そして、もうひとつがステロイドと成長ホルモンの乱用だ。筋肉を水っぽく、内臓サイズを大きくし、ミッドセクション全体を膨張させる結果が待っている。


 

だが機能性を求める筋力トレーニングであれば、そんなことにはならない。体脂肪を失ってスリムにさせることこそあれ、ウエストサイズに影響することはない。

腹斜筋は筋密度が高い。そのため、正しいやり方で負荷をかけると、パワフルになるだけでなく、ノミで彫り込んだような深さが出る。

しかし、腹周りを測るメジャーを伸ばすことはない。強力な腹斜筋が必要になる武術家や体操選手のウエストを見れば、そこがスリムなだけでなく、締まり、鉄のように硬いことがわかる。

要領を得ないエクササイズをやるよう今まで洗脳されてきたとしても、落ち込むことはない。この章では、ブルース・リーのように強いウエストを手に入れる方法を紹介したい。

サイド・クランチ、ケーブル、ラバーバンドや腹筋を鍛える玩具はゴミ箱行きだ。


ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

 『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
  ポール・ウエイド [著]/山田雅久 [訳]
  CEメディアハウス[刊]


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腹斜筋とは?

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』86頁
 

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