
愛媛県立三島高校3年の信藤美優(しんどうみゆ)さん(17)、山川ひなさん(17)は、ある高機能素材の活用でせっけんの泡立ちが良くなり、保水・保湿性も高まることを突き止めた。2人の論文は8月、愛媛大学社会共創コンテストの研究・探求・データサイエンス部門で全国2位に当たる準グランプリを受賞した。その素材とは――。
学校がある全国有数の製紙業の集積地・四国中央市でも近年注目が高まる素材「セルロースナノファイバー(CNF)」。植物成分の多くを占めるセルロースを、ナノメートル(10億分の1メートル)単位の細さに解きほぐした繊維状の物質で、軽くて強度の高い自動車や家電素材のほか、保湿性や粘性が高い添加材としての応用や開発が進んでいる。
学校の自然科学部に所属する2人。2024年の校内行事で自然素材のせっけんづくりを試みたが、泡立ちは不十分で、固まりにくいことも物足りなく思った。学校近くの大王製紙四国本社を同年夏に訪ねることにした。
そこで開発担当者から得たヒントは、繊維径が違う複数の種類のCNFをシェービングフォームに添加すると、一方は泡立ちが良くなり、もう一方は立った泡が長持ちするという機能を示すことだった。両者を添加すると、利点を兼ね備えることも可能ではないかという助言も得られた。実験用に複数種のCNFの提供も受けた。

こうして2人は原料である菜種油、純水、水酸化ナトリウムにCNFを添加したせっけんづくりに着手。試料をシリコーン型に流し入れ、15日間常温で固めた結果、CNF添加量が多いほどせっけんが固まりやすいことが分かった。特に繊維径が20~60ナノメートルと、CNFのなかでは比較的繊維が太いものの方が固まりやすかった。
一方、泡立ち特性を調べるため、2人は洗顔料を泡立てる際などに家庭でも使われる泡立ちホイッパーを独自に取り入れた。ホイッパーの容器にせっけん1グラムと水40グラムを入れ、泡立て棒を上下に動かして容器全体が泡で満たされるまでの回数を記録。1~5グラムのCNF添加量ごとにせっけんを計測した結果、添加量が多いほど回数は少なく、泡立ちが良いことが裏付けられたという。
さらに、せっけんの保水性を調べた。水10ミリリットルにせっけん0・5グラムを加えて溶かし、溶けたらバナナ(ドライフルーツ)を入れ、1日常温で放置。CNFの有無、さらに複数のCNFを原料としたせっけんでバナナの硬さを比べたところ、CNF、中でも繊維径3~4ナノメートルほどと極めて小さく、高い透明性と分散性があるCNFを添加したせっけんが保水性を最も高く保っていた。
CNFの添加でせっけんが固まりやすく、泡立ちも良くなること、さらに保水性も高まることを考察した2人。コンテストでは「評価しにくい泡立ち特性についても工夫して実験が行われた」と、アイデアに富んだ過程が高く評価された。
高校生活3年間の財産として、「実験の準備を念入りにしてきたこと」「論文を書く機会が多かったこと」――を2人は挙げる。信藤さんは「保健室の先生」、山川さんは「薬剤師」をそれぞれ目指し、勉学に励んでいる。【松倉展人】
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