産後女性のうつ症状と腸内細菌の状態などの関係について説明する京都大の松永倫子特定講師(左)と明和政子教授=京都市左京区で2025年6月13日午後2時1分、中村園子撮影

 産後女性のうつ症状には、腸内細菌の状態と食習慣が関係している――。そんな研究結果を、京都大の研究チームが発表した。子どもを産んだ女性の腸内環境を改善し、心身を守るためには、バランスのよい食事に加え、ある食品の摂取が効果的である可能性が示された。

 新型コロナウイルス禍以降、産後女性がうつに罹患(りかん)するリスクは増加。発症するのは約3割で、出産から5年ほどは症状が表れる可能性があるとされている。

 これまでの研究から、うつ病患者の大腸における腸内細菌の種類や量は、健常者と異なることが明らかになっている。しかし、産後女性を対象にした研究はほとんどなく、うつ症状を早期発見できる指標「バイオマーカー」の特定が進められている。

 研究チームは、4歳までの乳幼児を育て、精神・身体疾患のない産後女性344人を対象に調査を実施。うつ症状の重症度をスコア化したところ、うつのリスクが高かったのは48人だった。

 次に、大腸の腸内細菌の状態がうつ症状とどのように関係しているかを分析した。すると、腸内細菌の種類や量が多い人ほどうつ症状が弱かった。特に腸内環境を改善させる働きを持つ酪酸の産生に関わる「ラクノスピラ」が多いほど、その傾向があることが分かった。

 さらに、食事パターンを分析したところ、大豆食品やヨーグルトなどの発酵食品、海藻やキノコ、果物などを多く摂取する人は、あまり摂取しない人に比べてうつ症状が弱く、ラクノスピラの量も多かった。

 研究チームの京都大学大学院教育学研究科の明和政子教授(脳科学)は「豆腐やヨーグルトなどを意識して摂取するだけでも、多くの産後女性がうつになるリスクを改善できるのではないか」と推測する。

 今後は、出産後の女性それぞれの腸内細菌の状態や食習慣に応じ、うつ症状の早期発見や予防につながる支援方法の開発を目指して、産後のうつ症状との因果関係についても調べる予定という。

 研究結果は2日、米科学誌の電子版に掲載された。【中村園子】

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