
長寿の秘訣は心血管系が健康で人生に対して前向きなこと CECILIE_ARCURS/GETTY IMAGES
<百寿者は若い頃から病気にかかりにくく、心血管や神経の疾患にも強いことが判明した。ただし、その秘訣は遺伝よりも、生活習慣や前向きな姿勢に隠されている可能性が高い>
100歳まで生きられる人たちは、特定の病気に対して一般人より強い抵抗力を持つ「超人的な能力」を備えているのかもしれない。
先ごろ医学誌クリニカル・メディシンの電子版に掲載された論文で、ストックホルム(スウェーデン)のカロリンスカ研究所に所属するカリン・モディグ准教授らがそう報告した。1920~22年に生まれたスウェーデン国民の健康状態を追跡調査した成果とされる。
「100歳まで生きる人々には病気を寄せ付けない超人的な能力があるのかもしれない」と、疫学者のモディグはコラム投稿サイトの「ザ・カンバセーション」で説明している。
研究者らは「センテナリアン(百寿者)は非センテナリアンに比べて、診断の確定した症状も新たな病気の発症率も少ない」ことに気付いたという。しかも発症率の違いは超高齢になる前の段階から顕著だった。
この研究では参加者の健康状態を60歳の時からモニターしたが、既にその時点で、後にセンテナリアンとなる人たちの健康状態は別格だったという。「病気の数や種類、いくつかのバイオマーカー値に明確な違いがあった」とモディグは本誌に語っている。
人生に前向きな姿勢
センテナリアンの長寿の秘訣は何なのか。「1つの要因だけではないと思う」とモディグは言う。
「110歳以上のスーパーセンテナリアンの研究で1つの要因を特定しようとしたが、成功しなかった。ただし心血管系が健康で、人生に対して前向きな姿勢を保ち、生きがいを感じているという共通項は認められる」
今回の研究によると、心血管疾患はどの年齢層でも最も多かったが、「センテナリアンでは相対的に心血管疾患が少ない」ことが分かった。
また「神経精神疾患はセンテナリアンの間で一貫して少なかった」という。一方で併存疾患は少なく、単一の疾患群に属する疾患のみを持つ傾向があることも判明した。
モディグによれば、センテナリアンが心臓や脳に関連する疾患に強いのは遺伝によるものなのか、生活習慣によるものか、その両方なのかを判断するのは難しい。
「断言はできないが、長寿における遺伝の影響は多くの人が思うよりも小さく、むしろ生活習慣が大きな役割を果たしている可能性が高い」そうだ。
超高齢になると偶然の要素も加わる。転んで股関節を骨折する、インフルエンザに感染する、癌を発症するなどで、その後の人生は大きく変わる。
老後にたくさんの病気を抱え込まないで済む予防策はあるのか。「われわれの研究では調査していないが」と前置きした上で、モディグはこう語った。
「やはり生活習慣の影響が大きいと考えられる。ただし、どんな生活習慣がどんな影響を及ぼすかは、年齢によって異なるだろう」
Reference
Zhang, Y., Murata, S., Schmidt-Mende, K., Ebeling, M., & Modig, K. (2025). Disease accumulation and distribution across the lifespan in Swedish centenarians and non-centenarians: A nationwide life course comparison of longevity and health resilience. eClinicalMedicine, 87. DOI: 10.1016/j.eclinm.2025.103396
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