石井投手は13日夜、広島市のマツダスタジアムで行われた広島戦で、2対0の9回、3人目でマウンドに上がり、ヒットを1本打たれましたが、3つのアウトをすべて空振り三振でとり無失点に抑えました。

石井投手はことし4月5日の登板以降、39試合連続無失点として、阪神の藤川球児監督が19年前の2006年に作ったセ・リーグ記録を塗り替え、2021年に西武の平良海馬投手がマークしたプロ野球記録の39試合連続無失点に並びました。

石井「記録は素直に喜びたい」

石井投手は「試合が終わって藤川監督と写真を撮らせてもらっている時に実感がわいてきた。記録は素直に喜びたい」と話しました。

藤川監督からは「おめでとう。この先、まだ試合があるからまた頼む」と声をかけられたということで「変化球は少し甘い部分があったので、そこは次に向けて修正したい」と話していました。

阪神 藤川監督「心の底からうれしい」

阪神の藤川監督は、自身が2006年に作ったセ・リーグ記録を塗り替えた石井投手について「試合はまだ続くので自分の気持ちは出せないが、心の底からうれしい。日々のことを丁寧にやっていることが記録につながっている」と褒めていました。

石井大智投手とは

阪神の石井大智投手は、秋田県出身の28歳。

秋田工業高等専門学校を卒業後、藤川球児監督も所属していた独立リーグの高知ファイティングドッグスで3年間プレーし、2020年にドラフト8位で入団しました。

高等専門学校を卒業してプロ野球に入ったのは、石井投手が史上初めてです。

持ち味は平均球速およそ150キロのノビのあるストレートと、切れ味鋭いフォークボールです。

特にフォークボールで空振りを奪った率を示す「奪空振率」は40%近くとリーグ屈指です。

今シーズンはリリーフとして42試合に登板してわずか1失点、防御率0.21と際立った安定感を見せています。

鉄壁を誇る阪神のリリーフ陣の中で主に終盤の8回や9回を任されていて、藤川球児監督も「勝負どころで強さを見せてくれている。ハートの問題というか、すばらしいものがある」と大きな信頼を寄せるピッチャーです。

「考える力」で絶対的なリリーフに

「たとえ満足のいくボールが投げられなくても、満塁になったとしても、ゼロに抑えればいい」と石井大智投手は話します。

たとえ調子が悪くても、どんなピンチの状況でも、無失点に抑え続けたその大きな要因は「考える力」にありました。

今シーズンの石井投手は、順風満帆だったわけではありません。

4月末には体調不良のため10日間の離脱。

さらに6月初旬には試合で打球が頭に直撃するアクシデントで自宅で静養するなど、およそ1か月間の離脱を余儀なくされました。

調子が上がらない時期もあり、「ブルペンでストライクが入らない」、「まだまだ自分はやれるはず」などと周囲に漏らすこともあったといいます。

実際、データを昨シーズンと比べてみても、ストレートの平均球速や、スライダーやカーブといった変化球のストライク率、イニング当たりに奪う三振の数などが下がっています。

それでも、点を取られないのはなぜなのか。

大きな要因は「考える力」にあります。

石井投手はシーズン前、みずからの投球動作を分析し、筋肉や骨の構造も含めて体の使い方を学んでいました。

その経験と知識がマウンドでも生きていて、バッター一人一人を観察し、相手をどう動かせば打ち取ることができるのか、考えながら投球をするようになったといいます。

石井投手はその感覚を「相手の体に対して“軸が整う”ような動きを入れてしまったら、いいボールでも対応される。逆に“軸をずらす”動きを入れさせられれば、たとえ甘いボールでも凡打になるような攻め方ができる。どんなにすばらしいボールを投げても抑えられないことがあり、なぜなんだろうと考え始めてから、少しずつ分かるようになってきた」と説明します。

たとえ満足のいくボールが投げられなくても、凡打の山を積み重ね、首位を走るチームの絶対的なリリーフとなったのです。

今月9日、38試合連続無失点をマークして藤川球児監督の記録に並んだ夜、話していたことばが印象的でした。

「自分のできることをやってきているだけ。120%じゃなくて、100%の準備をすることを心がけています」

相手を抑えるため、自分に何ができるかを考え続け、それをただ実行していく仕事人。

謙虚なことばの奥に、ゼロを刻み続ける男のすごみが感じられました。

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