冬に全国大会を開催する高校スポーツは多く、年末年始には連日、メディアが熱戦を伝える。しかし2025年は、高校スポーツの裏にある様々な問題も注目された。仙台育英高校サッカー部(宮城)では構造的ないじめが、広陵高校硬式野球部(広島)では部員による暴力問題が発覚した。なぜ、スポーツ界のハラスメント行為は無くならないのか。当たり前だと感じていた、あるいは見て見ぬふりをしてきた不都合な事実に目を向けるべき時が来ている。(この記事はシリーズの第2話です)
【スポハラ特集1】怒鳴る指導で競技力向上させる “恐怖学習” 一部保護者も容認?
【本記事】自分の “黒歴史” を語れるコーチが選手の主体性を引き出す
【スポハラ特集3】報道された “ケツバット”「誰がチクった」逆上した指導者
【スポハラ特集4】「殴ってくれたから今がある」背景に “乗り越えた美談” の罠
自分の 「黒歴史」を語れる指導者こそ、主体性を伸ばす
古い指導法に頼らない指導者たちの人材育成術を記した島沢さんの新著、『叱らない時代の指導術 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践』で登場する人々は、主体性を伸ばす指導方法はもちろん、自身の “黒歴史” ともいうべき過去の指導法の反省点を隠すことなく語っている。
「それを話せるのは、彼らが良いコーチングができているという自負があるからだと思います。私が接していて “このコーチはきっと伸びる” と感じる人は、その黒歴史を具体的に綿々と語れる人です。過去の反省を語っていると、その人自身が二度と戻りたくないって思うんですよ。だから向き合うことってすごく重要なんです」
「つい怒鳴ってしまう指導者たちへのサポートが必要」
もちろん指導者の多くは、「恐怖を与える指導は良くないこと」だとわかっている。それをやめたいし、叱らない指導を身に付けたいと思っているが、気づくとつい怒鳴っている。そんな葛藤を抱える指導者も少なくないのではないだろうか。

自身が受けた “昭和のスパルタ指導” の副作用から抜け出すことは容易なことではない。島沢さんのもとには、様々な指導者から「指導を変えて勝てなくなるんじゃないか、失敗するのが怖い」という相談が届くという。
「昭和の古いやり方で、勝つためにはこうするんだと、指示命令でやってきたやり方を変えることの “戸惑いや葛藤” を理解した上で、学びのサポートをすることが必要だと思うんです。その人が選手の時にどんな指導者に巡り合っているのかとか、そういった掘り下げをしていくと、『だから今イライラしちゃうんだね』というところに導けるわけです」
スポーツの本質は楽しむこと 「勝利」はその後についてくる
「スポーツの本質はまずは楽しむこと。スポーツを本気で楽しもうとしたら手は抜けない。主体的にやっていけば、すごくハードなメニューも『自分が強くなるためにやろう』となるわけです。“本気で楽しむ” その後ろに、勝利は必ずついてきます。ただそれは、時間がかかるんです。そこの『時間がかかる』というところで、コーチたちが気持ちを切り替えられるか、です」

島沢さんは、指導する子どもたちの本当の気持ちを引き出す関係性づくりも大切だと語る。子どもに問いかけ、気持ちを聞き、少しずつトレーニング負荷をかける。子どもの年齢や特性に合わせたやり方でトレーニングをしていく。ひとつひとつの課題に、指導者と子どもたちが向き合えば、それぞれが成長するのだという。島沢さんは、海外で重視されるスキルについても語った。
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