
企業会計基準委員会(ASBJ)は18日、M&A(合併・買収)で生じる「のれん」を巡る会計ルールについて公聴会を開いた。出席した追手門学院大学の宮宇地俊岳教授は「のれんを非償却に切り替えて国内のM&Aが増えたとの証拠はない」と指摘。のれんを非償却とし減損損失のみで処理するルールの導入は「支持しない」と話した。
のれんは買収額と買収先の時価純資産の差額を指す。日本の会計基準は原則20年以内で償却し、価値が大きく減った場合は減損損失を計上する。国際会計基準(IFRS)と米国会計基準では定期償却せず、必要に応じて減損損失のみで処理する。
のれんの会計ルールを巡っては複数の民間団体などが5月、ASBJの運営母体の財務会計基準機構(FASF)に定期償却か非償却かを選べるようにすることなどを要望した。スタートアップ関係者からは「利益を押し下げるのれんの償却ルールがM&Aの阻害要因」との見方もあった。FASFは7月、幅広い関係者から意見を聞き取ると決め、ASBJが開いた公聴会は本日が3回目だった。
企業が償却と非償却を選べるようにする選択制の導入には否定的な声が多かった。PwC Japan監査法人の齋藤勝彦パートナーは「恣意性が入るのではないかというデメリットが見える上、財務諸表の比較可能性も損なわれる。選択適用でない方が監査はしやすい」と話した。
宮宇地氏は非償却とする場合の減損テストについても「構造的な問題がある」とした。減損テストは損失計上の額やタイミングで経営者による恣意性が入りやすいとの指摘がある。太陽監査法人の柴谷哲朗シニアパートナーは、のれんを非償却とし純資産に対する比率が高まる場合「経営者はのれんがさらに膨らむことをためらう可能性がある。償却の方が次の一手を打ちやすいかもしれない」と話した。
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