ハーレーダビッドソンを巡る独占禁止法違反の構図

 独占禁止法違反(優越的地位の乱用)を認定された「ハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)」は、日本国内の正規ディーラーに過剰で達成困難な年間の販売ノルマを課し、達成状況を逐一管理していた。

 関係者によると、HDJの評価で一定の水準を下回ったディーラーには「改善計画」の提出を指示。それでも販売台数が伸びなければ呼び出して「追い込み」をかけることもあった。

 「結局のところ、あと何台売れますか?」

 HDJ幹部はこう切り出し「(販売ノルマの)80%までは……」などと返答するディーラーを「最初から80%を目標にするやつがいるのか」と叱責。さらに「数字を伸ばせないのであれば、ハーレーのビジネスをやる意味がない」と言い放ち、ノルマ達成を「誓約」させていたという。

 大型オートバイの米国ブランド「ハーレー」は独特なエンジン音などの特徴で知られ、日本にも熱烈な愛好者がいる。日本の二輪市場は国産車が圧倒的なシェアを誇る一方、ハーレーは輸入小型二輪車の新規登録台数でトップシェアを維持。「日本は重要なマーケット」(HDJ社員)とされる。

 「リーマン・ショック(2008年)当時でさえ売れていて『嫌ならやめますか?』とディーラーに迫るほどだった。今や老舗ディーラーの廃業も出て、人気に陰りが見えてきた」

 こう話すのは元正規ディーラーの西本光春さん(68)だ。福岡県で19年まで約20年間にわたって販売店を経営。成績上位のディーラーとして何度も表彰されたが、近年はHDJに対して批判的な立場を取る。

 西本さんは「過剰なノルマもそうだが、ディーラーにショールームの拡大などの設備投資を求めるばかりで、販売促進をおろそかにしてきたのではないか」と指摘。「ハーレーは夢を売る商売だったはずなのに、台数ばかりを追う商売になってしまった。原点に戻ってほしい」と訴えた。【山田豊、植田憲尚】

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