メガソーラーの建設をめぐり、釧路湿原周辺で国の特別天然記念物のタンチョウなどへの影響を懸念する声があがり、釧路市では新たな条例が成立し、国に規制を求める動きが出ています。

こうしたことから環境省は、資源エネルギー庁や林野庁、文化庁などの関係省庁と連携して太陽光発電と地域の共生や規律の強化を検討するための連絡会議を設置し今月24日に初めての会合を開くことを発表しました。

連絡会議では、関係する省庁の課長や室長級の担当者が全国各地の課題を共有し、制度的にどのような対応ができるかを検討していく方針です。

浅尾環境大臣は、19日の閣議後の会見で「再生可能エネルギーを最大限導入していく必要があると考えているが、そのためにも地域と共生していく必要があり共生が図られない太陽光発電の建設については、抑制すべきだと考えている。メガソーラーにかかる地域共生の課題を共有し、必要な対応を検討するための議論を本格化させていきたい」と述べました。

武藤経済産業相 “地域との共生 連携強化を図っていく”

「メガソーラー」の建設をめぐり、関係省庁との連絡会議が設けられることについて、武藤経済産業大臣は19日の閣議のあとの記者会見で「地域との共生のさらなる確保に向けた連携強化を図っていかなくてはいけない」と述べました。

そのうえで、政府がことし閣議決定したエネルギー基本計画で、発電量に占める再生可能エネルギーの割合を2040年度には「4割から5割程度」に引き上げるとした目標に触れ、「次世代の太陽光発電の開発や導入の支援をしながら、再生可能エネルギーの割合を高める見通しの実現に向けて取り組んでいく」と述べました。

SNSで「メガソーラー」含む投稿 急増

SNSで「メガソーラー」という言葉を含む投稿は急増していて、分析ツール「Brandwatch」で調べたところ、Xの投稿は去年1年間ではリポストを含めておよそ244万件だったのが、ことし7月から18日までで去年の2倍を超える、およそ583万件となっています。

釧路湿原周辺の「メガソーラー」について、モデルの冨永愛さんや登山家の野口健さんが投稿したことなどもあって、7月以降の「メガソーラー」を含む投稿では「釧路」に言及するものがおよそ192万件に上っていて、その多くは「環境破壊を許すべきではない」「自然を壊してよいのか」などと反対する内容になっています。

また、「釧路」以外にも各地のメガソーラーや太陽光発電の施設について、設置に反対したり批判したりする内容の投稿も多くなっています。

一方で、メガソーラーと、ことし夏の記録的な暑さや熊本県での記録的な大雨による浸水被害、それに各地でのクマ被害が関連しているとする根拠のない情報なども拡散しています。

メガソーラーの現状と課題は

太陽光発電などの再生可能エネルギーについて、政府は2011年に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、一貫して拡大を目指す方針を掲げてきました。

2012年からは大手電力会社に対して再生可能エネルギーで発電した電力を発電コストを上回る価格で買い取るように義務づける制度が設けられ、太陽光発電を中心に導入量が増えました。

資源エネルギー庁によりますと、再生可能エネルギーが国内の発電量全体に占める割合は2011年度は10.4%だったのに対し、2023年度は22.9%となっています。

このうち太陽光発電が最も発電量が多く、2023年度は全体の9.8%を占めています。

こうした状況を背景に、メガソーラーと呼ばれる出力1000キロワット以上の大規模な発電施設も増えていて、国の制度で認定された件数は2025年3月末時点であわせて8995件に上っています。

政府は将来的には再生可能エネルギーを主力電源として、最大限導入を進めるとしていて、2040年度にはこのうち太陽光発電を発電量全体の23%から29%程度まで増やす計画を示しています。

一方、太陽光発電の導入の拡大をめぐっては課題もあります。

資源エネルギー庁によりますと、日本はメガソーラーを導入しやすい平たんな土地が少ない上、すでにこうした土地への設置が進んでいて、適地を探すのに制約がある状況だということです。

こうした中、新たに傾斜地などに設置する際に安全性を確保できるかや、環境を守る観点などからメガソーラーの建設に懸念を抱く声があり、事業者に対して地域と共生した形での再生可能エネルギーの導入を求める条例を制定する自治体も増えています。

こうした条例が制定された件数は2024年度までに全国であわせて323件に上っていて、地域の理解を得ながら太陽光発電の拡大に道筋をつけられるか課題になっています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。