
伊藤忠商事と持田製薬は22日、後発薬(ジェネリック医薬品)メーカーの日医工など3社の持ち株会社アンドファーマ(東京・中央)にそれぞれ162億円を出資し、持ち分法適用会社にすると発表した。長引く後発薬の供給不安の解消につなげると同時に、業界再編の軸になる。
後発薬業界では合従連衡の動きが相次いでいる。10日には日医工とサワイグループホールディングス(GHD)傘下の沢井製薬が製造所集約と品目統合に向けて合意したと発表した。明治ホールディングス傘下のMeiji Seikaファルマやダイトなども独自の連携を進める。再編によって経営規模が拡大すれば、生産コストの抑制も期待できる。
10月1日付で取得する。アンドファーマの全株を保有するジェイ・イー・エイチ(JEH)から一部を譲り受けるほか、アンドファーマが実施する第三者割当増資を引き受ける。JEHは企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と医薬品卸のメディパルホールディングスの共同出資会社。
出資後は伊藤忠と持田製薬が20%ずつ、JEHが60%を持つ。伊藤忠として製薬企業への出資は初めてとみられる。伊藤忠は後発薬業界には経営効率化の余地があるとみて、生産や物流のコスト削減を促す。

アンドファーマはJWP傘下の日医工、共和薬品工業、T'sファーマ(旧武田テバファーマ)の持ち株会社として7月に発足した。同じJWP傘下の3社間で品目統合や生産での連携を進めている。3社の直近の売上高を単純合算すると約2000億円となり、最大手の東和薬品(2025年3月期の連結売上高が2595億円)に次ぐ規模だ。
持田製薬はバイオ医薬品の後発薬(バイオシミラー)の開発や事業化に強みを持つ。政府もバイオシミラーの使用を促しており成長事業と位置づける。出資により日医工の持つバイオシミラー製造能力とのシナジー創出を図る。
後発薬業界では20年以降、小林化工(福井県あわら市)や日医工、沢井製薬など主要メーカーの品質不正が相次ぎ発覚し、供給が停滞した。同じ成分の薬を各社が別々に生産しているため効率が悪い上、政府が医療費削減に向けて安価な後発薬の利用を推進することもあり現在も需要に供給が追い付いていない。厚生労働省によると8月時点で2割弱の品目が通常出荷できずにいる。
供給不足の早期解消は見通せない。業界団体の日本ジェネリック製薬協会は供給が需要に追いつくのは29年度と予測する。厚労省の有識者検討会は24年、供給不安の解消のため5年程度の集中改革期間を設定した。業界全体で効率生産を実現するには企業間の連携が必要だと指摘し、大手に業界再編をリードするよう促した。呼応する形で再編の動きは加速している。
アンドファーマ設立もこの連携の一つで、今回、伊藤忠と持田製薬が出資を決めたことで、業界再編の主軸になる可能性がある。今後安定供給に向けた製造連携を加速させるほか、伊藤忠と持田製薬がそれぞれアンドファーマや傘下の事業会社に人員を派遣して品質保証やガバナンス体制の強化を目指す。
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