2025年4月から休館しているDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)

DICは保有する美術品の一部について売却を始めると発表した。売却対象の約280点のうち、英競売大手のクリスティーズを通じ約80点を国際オークションに出品する。同社はDIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)について香港投資ファンドのオアシス・マネジメントなどから見直し要求を受け、保有作品数を約4分の1に減らすと決めている。

約80点の中でも特に著名で経済的価値が高い約20点は、2025年11月中旬から米ニューヨークで開かれるオークションに出品する。クロード・モネの「睡蓮(すいれん)」やオーギュスト・ルノワールの「水浴する女」などを含む。残りの作品の売却はオークション以外の方法で26年12月まで段階的に進める。

DICは従来、25年中に美術品の一部売却に着手し、少なくとも100億円程度の現金を得る予定だった。クリスティーズとの契約により実現できる見込みというが、オークションによるため最終的な金額や時期、収支への影響は確定していないとしている。

DICが保有する美術品全384点の多くは創業家2代目の川村勝巳氏が買い集め、DIC川村記念美術館で展示してきた。投資家などが見直しを求め、DICは24年12月、保有を続ける作品を4分の1相当の約100点まで減らし約280点を売却することや、美術館を縮小し都内に移す方針を決めた。米国の画家マーク・ロスコの作品7点は継続保有する。

オアシスはDICの方針決定後も、株主利益と利益相反があると主張した。3月のDICの定時株主総会では猪野薫会長と池田尚志社長の取締役再任案に反対するよう呼びかけたが、再任案は可決された。池田社長は総会後に日本経済新聞の取材に答え、美術品の保有継続に株主から賛同を得たほか、オアシスからも一定の理解を得たと述べた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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