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当時、アメリカは、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」を抱えて、経済的な苦境に直面していました。プラザ合意はそのアメリカを支えるのが狙いでした。

会場は、1907年オープンの老舗、ニューヨーク五番街のプラザホテル。豪華なことで知られ、たびたび映画の舞台にもなりました。こちらの写真も映画のワンシーンです。

プラザホテルは1988年から1995年まで、今のトランプ大統領が所有していました。1992年の映画「ホーム・アローン2」では、トランプ氏がこのホテルで、主人公に道を聞かれるという場面が約7秒登場します。トランプ氏は、このころから一貫して、アメリカが日本に食い物にされていると主張してきました。

このころのアメリカは、メイド・イン・ジャパンの自動車やテレビが叩き壊される映像が流れる。そんな時代でした。とりわけ自動車の輸出をめぐり、日米の貿易摩擦が激しくなった時期です。プラザ合意により、ドル高を是正することで、アメリカの輸出に協力しようということになったわけです。

【プラザ合意の効果】

効果は、見事なまでにありました。プラザ合意の直前、円相場は1ドル=240円台でした。それが1年後には150円台まで、円高が加速しました。日本政府は当初、215円程度までの円高を容認していたとされます。しかし、いったん動き出した市場は止まることなく、円高が一気に進みました。1994年6月には戦後初めて100円を突破しました。

円高は、日本からの輸出には大打撃で、プラザ合意のあと、“円高不況”に陥りました。 政府・日銀は、財政出動と金融緩和で対応し、市場に出回るお金を増やしたことで、株や不動産が買われて価格が急激に上がりました。バブル経済の到来です。

プラザ合意は、バブル経済の引き金として記憶されています。その後の円相場も見てみますと、2011年10月に1ドル=75円台の最高値を記録したあと、今度は逆に円安が進みます。去年は、一時、161円台というプラザ合意後の1986年以来の円安水準となりました。円高・円安にそれぞれメリット、デメリットがありますが、為替に振り回されてきた40年とも言えます。

【プラザ合意の教訓】

1985年当時、大蔵省の国際金融局長としてプラザ合意の交渉に携わった行天豊雄さんに今回の節目を前に、インタビューをしました。行天さんは、「非常に重要なかつ貴重な選択の問題であり、率直に言って、日本はそれに対する選択を誤ったのではないか。誤ったことが、失われた30年、40年の原因になったのではないかと私は思います」と振り返りました。後半の「誤ったことが」のところで、語気が強まったのが印象に残っています。

行天さんは、「プラザ合意そのものは正しかった」と言いますが、その後の政策を間違えたことで、バブル、バブル崩壊、そして、失われた30年につながったという意味で「選択を誤った」と言っていました。具体的には、「行き過ぎた円高をまったく予想していなかった」と率直に認めています。そして、「政治家も官僚も経済界も変わることができなかった。新しい産業に資金や雇用を振り向けることができなかった」と指摘。94歳の行天さんは、ご自身の反省を込めて、これをプラザ合意の教訓だといいます。

つまり、日本にとって、IT産業など、新しい分野に舵を切るチャンスだったにもかかわらず、きょう、あすのことばかりを考えて既存の産業を保護しようとするあまり、長期の戦略を立てることができなかったのだと受け止めました。また、円高への対応が場当たり的だったということだと思います。

【この40年の経済力の推移】

プラザ合意のあった1985年と今の経済力を比較するために、GDP=国内総生産で見てみます。この40年で、▼アメリカは約7倍に、▼中国は約62倍に増えました。一方、▼日本のGDPは、約3倍にしか増えていません。

この間、2010年に中国に抜かれ、2023年にドイツに抜かれました。IMF=国際通貨基金は日本がことし、インドにも抜かれると予測しています。つまり、1985年に世界第2位の経済大国だった日本がことしは5位になると見られます。

【“稼ぐ力”で豊かさの実感を】

日本企業がどうやって“稼ぐ力”をつけて、日本全体にその富を還元するのか。そして、ひとりひとりの手取りをどうやって増やして、豊かさを実感できるようにするか。プラザ合意から40年の9月22日、自民党総裁選挙が告示されました。日本が得意とする製造業とAIをかけあわせた分野で成長を目指すなど、どうやって日本はこれから食べていくのか。候補者にそれぞれ問いたいですし、40年の節目に多くの人と一緒に考えたいと思います。

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