キックオフイベントを開いたOKIの森孝広社長㊧とエトリアの中田克典社長(1日、横浜市)

リコーと東芝テックが共同出資する事務機生産会社エトリアは1日、OKIを加えた新体制に移行したと発表した。3社の事務機の開発・生産部門を統合した。オフィスのペーパーレス化が逆風となるなか、各社のノウハウを新製品の開発に生かすほか生産ラインの再編成も進め、生き残りをはかる。

「大胆な協業で開発力の強化とコストダウンに挑戦する我々は、業界から注目を集めている」。同日、新体制のキックオフイベントを開いたエトリアの中田克典社長は、従業員に向け発信した。エトリアの連結従業員数は約1万2500人と、OKIの合流で1000人強増えた。

エトリアは2024年7月にリコーが85%、東芝テックが15%を出資して設立した。1日からはリコーが81%、東芝テックが14%、OKIが5%を保有する体制に変わる。

エトリアが開発・生産した事務機は、出資元の3社向けに供給する。3社以外のメーカー向けにもOEM(相手先ブランドによる生産)で販売する方針だ。

3社が組む背景には、オフィスにおける印刷需要の減少がある。事務機の業界団体のビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の調べでは、24年の複写機・複合機の出荷台数は361万台とピークだった18年から26%減った。

印刷枚数が減ると、採算性の高いトナーなど消耗品による稼ぎが減る。環境規制や情報セキュリティーなどへの対応が求められるなか、単独でハードウエアを開発するのは中堅規模のメーカーにとっては厳しくなっている。

OKIの森孝広社長は「栄枯盛衰のなかで、優秀な技術者などの知的資本が失われていくのはありえない。資本力のあるエトリアに入れていただき、チャンスをもらった」と話す。

リコーと東芝テックにとっては、OKIが小型プリンターで培った発光ダイオード(LED)を使った印刷技術を取り込むメリットもある。製品の小型化につながるからだ。直近では、A3レーザー複写機・複合機で最大手のキヤノンが複合機の新製品にLED方式を採用するなど、競争が激しくなっている。

地政学リスクが顕在化するなか、旧リコーと旧東芝テックの工場では生産品目の再編を進めている。エトリアはOKIの拠点が加わっても拠点の削減は予定していないとするが、今後の需要次第では体制を見直す調整が生じる可能性もある。

業界では仲間づくりの動きが広がる。富士フイルムビジネスイノベーションとコニカミノルタは1月、事務機の部品調達を統合した共同出資会社を設立した。

事務機業界では、アクティビスト(もの言う株主)による圧力も強まっている。シンガポールに拠点を置くエフィッシモ・キャピタル・マネージメントはリコー株の24%、コニカミノルタ株の9%を保有する。京セラも、香港のオアシス・マネジメントが株主になっている。投資家は資本効率を厳しく見ており、コスト削減を求める声が今後強まる可能性もある。

現状、単独でも規模が大きいキヤノンのほか、シャープなどは単独での生き残りを志向する。ただ、地政学リスクなど事業環境が劇的に変化するなか、新たな仲間づくりの動きが今後も顕在化する可能性は十分にある。

(山田航平、藤木みいな)

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