
三菱ケミカルグループは8日、医療機器向けの樹脂活用で九州大学や大阪大学と共同研究を始めたと発表した。患者の血液に接触するような機器向けに三菱ケミカルが開発した、特殊な塗工をしなくても血栓ができにくい新素材を使う。従来よりコストも低減して2027年に実用化、量産を目指す。
三菱ケミカルは心臓カテーテルや人工心肺回路など直接患者の血液に触れる機器向けに、血栓の発生を抑えられる新素材を開発した。新素材の評価や医療現場からのニーズ抽出などで九州大の田中賢教授、大阪大大学院の宮川繁教授と共同研究する。
チューブなどの医療機器が直接血液に触れると、異物として反応した血液が凝固したり血栓が生じたりして血流の循環を妨げる場合がある。血栓を防ぐにはチューブなどにコーティングを施すが、塗工のためのコストがかさむため一部の高度な医療機器向けに限られる。医療現場では防げなかった血栓への対応が課題となっていた。
三菱ケミカルが開発した新素材はアクリル系のポリマーだ。塩化ビニールやウレタンなどの樹脂基材に混ぜてチューブなどをつくると、たんぱく質がつきにくく血栓ができにくくなる。従来の血栓を防ぐための塗工工程が不要になり、製造にかかる時間やコストの削減にもつながるという。
血栓を作らない医療機器、技術に対する医療現場のニーズは高い。コストを抑えられることで、塗工では導入が進まなかった透析分野などより広い医療機器への展開が見込める。新素材のポリマーは日本で製造し、インドの拠点で樹脂などと混ぜ合わせて世界の医療機器メーカーへの供給を目指す。
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