
退陣を表明した石破茂首相に続く新政権への注文も相次いだ。自民党の高市早苗総裁による政権発足のための連立協議が長引き、首相指名は遅れる公算が大きくなる。政治の安定や資産運用立国に向けた政策の継続を求める声に加え、外交など幅広い分野で政治の実行力を求める意見が出た。
「株価が上がっているのは新政権への期待が一番の要因だ。早く(政権の)座組みを固めてほしい」。大和の荻野氏は新政権の発足に向けた与野党協議の推進を求めた。「前の政権の(政策の)資産所得倍増、資産運用立国などもしっかり継続してほしい」とも付け加えた。

岸田文雄前首相が打ち出した資産運用立国を巡る政策は大手金融機関で歓迎する向きが強く、一段の強化を求める声が出た。「金融サービス業をバックアップしてほしい。規制緩和を期待したい」。三井住友の中島氏は銀行・証券・保険・信託といった「業態をまたぐサービス提供を可能にする規制緩和」などを念頭に金融を成長産業と位置づけた政策の実施を求めた。
「理解を示す政治家や官僚が増えている」と強調した。英国政府が今夏に公表した「リーズ改革」と呼ぶ政策パッケージが念頭にある。規制改革などを通じ英国の金融サービス企業の成長を促す。野村の奥田氏も少額投資非課税制度(NISA)などに言及し「日本の伸びしろを作る意味でこの政策を進めてほしい」と述べた。
幅広い分野で政策の推進を求める意見があった。みずほの木原氏は「省力化投資はどんどんしないといけない」と力説した。主要7カ国(G7)で日本の設備の使用年限が長くなっているという根拠をあげ「劇的に生産性をあげられる」と発言した。具体策として投資を促進する税制の創設を唱えた。
野村の奥田氏は日米関係に触れ「競争条件で負けないような国際協調や外交政策ができると我々も活躍しやすい」と話した。三菱UFJの亀澤氏も「色々な変化や不透明感もある。新政権には内外への発信力を期待したい」と主張した。
みずほの木原氏も「日米が共存共栄する姿をつくることが重要だ」と語った。大和の荻野氏は「日米関係をさらに強固にして将来的には関税の引き下げにつなげるといった動きをしてほしい」と触れた。外交政策に関する発言が相次いだのは米トランプ政権の関税政策などで外交の重要性が高まっていることが背景にある。
高市氏が積極的な財政政策を志向するとの見解を背景に、財政拡張に伴う日本国債の格下げリスクへの懸念が強まっている。大手金融のトップは短期的な国債の格下げの可能性については低いという見方で一致した。
野村の奥田氏は「過度に日本の格付けを気にしている、不安視している声は今のところない」と言明した。三井住友の中島氏は「デフレに戻ると格下げリスクになる」と指摘した。
メガバンクはドル資金の調達コストの上昇に直結する国債の格下げにかねて懸念を示してきた経緯がある。三菱UFJの亀澤氏は「マーケットが織り込むのが一番怖い。マーケットの発信や声はよく聞いてもらいたい。(格下げは)日本経済全体にマイナスになっていく。大きく経済への影響がある」と説いた。
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