
NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)は9日、川崎重工業との協業を発表した。NTTがグループで開発する次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を活用し、ロボットを管理しやすくするシステムのプラットフォーム(基盤)を構築する。
同日付で2社で戦略的協業に関する覚書を締結した。主にロボの機械部分を川崎重工が担い、NTT側はロボ制御のための通信インフラやシステム面を担当する。基盤上で異なるメーカーの複数のロボを運用できるようになる。医療や介護、警備など人手不足が深刻な業界の課題解決につながるとみている。
9日開いたNTTドコモグループの法人顧客向けイベント「NTT docomo Business Forum'25」の基調講演で、ドコモビジネスの小島克重社長が新たな協業を明らかにし「人とロボットが協調する社会を目指す」と話した。

川崎重工は対話などのコミュニケーションを通じて人々の生活を支援する「ソーシャルロボット」を開発する。その中の一つである、自律走行型ロボ「Nyokkey(ニョッキー)」は2つの腕やセンサーを搭載しており、飲食店での配膳や接客などの場面で使われることを想定している。
屋内配送ロボ「FORRO(フォーロ)」は病院での検体や薬剤を運搬する目的で開発が進んでいる。

NTTが提供するIOWNや高速通信規格「5G」などのネットワークを活用することで、ロボが相互にリアルタイムで情報交換できるようになる。これらの技術をうまく組み込むことで、人とロボの連携がよりしやすくなるとみている。
今回の新しい協業に先立ってドコモビジネスと川崎重工はロボ分野での連携に乗り出している。ドコモビジネスは2023年、川崎重工が出資するメディカロイド(神戸市)とロボによる遠隔手術の実証実験をした。6月には欧州―日本間で実施した遠隔手術の実証に初めて成功した。これまでの実証の取り組みも踏まえて、ロボ活用のための基盤構築に協業関係を拡大した。
ドコモビジネスは重点的に取り組む技術領域の一つに「人工知能(AI)およびロボティクス」を掲げる。短期的にはAIによる業務効率化や自動化、長期的には、人の業務を代行する「AIエージェント(自律型AI)」がロボの管理を行うまでAI技術の進化を見込んでいる。
ソフトバンクグループ(SBG)は8日、スイス重電大手ABBから約8000億円でロボ事業を買収することを発表した。ロボにAIを搭載し自律的な行動が可能になる「フィジカル(物理的)AI」は注目領域だ。ドコモビジネスと川崎重工も、基盤での協業に踏み込むことでAIの新たな競争軸で優位性を高める考えだ。
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