
静岡県はスタートアップと組み、県内のサッカー試合や音楽イベントなどを月額2000円余りで楽しめるサブスクリプション(定額課金)企画を始めた。参加する主催者は新規動員や、繁閑差を埋めて安定した収益につながる。県によるとサブスク型のイベント誘客は自治体で初めてで、まずは3年で5000人の登録を目指す。
サブスク企画は「しずGo!」。名古屋大学発スタートアップのSonoligo(ソノリゴ、名古屋市)が県の支援を受けて開発した。月2178円を払うと1カ月先までのイベントや観光施設を月4回まで予約できる。コンテンツ数は14日時点で約40個用意した。
スポーツの分野はサッカーJリーグのジュビロ磐田や藤枝MYFC、男子プロバスケットボールのベルテックス静岡などの試合が並ぶ。県内で活動する交響楽団のコンサートのほか、美術館や神社での体験などもある。コンテンツによっては平日予約に割引券が付くなど、需要に応じて複数のプランも用意した。
「月額費用は安めに設定しているので、気軽に使ってほしい」と鈴木康友知事。ソノリゴは東京や大阪など都市圏で自社サービスを展開している。静岡では県と組むことで割安にでき、公営施設の参加も促せたという。定価4500円のオーケストラの演奏会など1つのイベントで月額料金を超えるものもある。

県は2025年度の新規事業として2360万円の予算を計上した。県民以外も使えるため、例えば仕事で定期的に静岡を来訪する人やスポーツファン、余暇を楽しみたい都市圏のシニア層といった需要も見込む。
「(都市圏では)サブスクサービスを通じた新規顧客が参加者の半数を占めたイベントもある」とソノリゴの遠山寛治代表は語る。サブスクによる収益は主催者とソノリゴで分配する。契約によって異なるが、参加者数に応じて主催者に還元したり、事前に契約額を決めておいたりできる。
イベントや公営施設の運営は固定費率が高く、動員数や来客数の上積みがカギを握る。県によると認知度が低いため収支の厳しいコンテンツや、時期によって大きな繁閑差のあるイベントもある。サブスクでその穴を埋め利益率を高める。サブスク客向けのチケット在庫数などはソノリゴが都市圏で培ったノウハウを使う。
3年後に5000人という目標は「ビジネスとして自走できる水準」(遠山代表)になる。現状は県西部のイベントが多く、今後3年間で中部や東部に広げてコンテンツ数を計100まで拡充することを目指す。自治体との初の協業の結果を見つつ、ほかの地域でも展開できるか検討する。
県はサブスクで得られたデータにも期待を寄せる。それぞれのコンテンツを横断して分析でき、人気イベントにどのような人が多く来ているかなどがわかる。オーケストラの演奏会参加者は土・日曜日に博物館に行くことが多いなど、それぞれの顧客の属性も見えてくる。公営施設の魅力度向上につなげる。
(佐伯太朗)
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