名古屋港で船積みを待つ自動車

名古屋税関が22日発表した中部5県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野)の2025年度上期(4〜9月)の管内貿易概況(速報)によると、輸出額は前年同期比1%減の12兆3814億円だった。年度半期ベースで2020年4〜9月以来、10期ぶりの減少となった。トランプ米政権の関税政策の影響で、自動車を中心に米国向けの輸出が減った。

自動車の輸出額は2%減の4兆2739億円だった。アジアや欧州連合(EU)では好調だったのに対し、米国向け輸出額は5%減の1兆3530億円だった。大型ガソリン車や電気自動車(EV)など高単価の車種が減った。前年の同時期より為替が円高方向に振れたことも輸出額を押し下げた。

関税影響を避けるため、米国に輸出していた素材を現地調達に切り替える動きもある。厨房機器大手のホシザキは米国で生産する製氷機のコア部品の現地調達を増やす。小林靖浩社長は8月の決算会見で「鉄鋼関税やアルミニウム関税の影響が大きい。何年かかけて切り替えていく」と話した。中部では9月単月の鉄鋼の対米輸出額が前年同月比15%減った。

上期の輸入額は2%減の6兆9878億円だった。原油の価格が下落したほか、輸入量も減った。輸出額から輸入額を差し引いた貿易黒字額は1%増の5兆3936億円だった。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの塚田裕昭主任研究員は「自動車メーカー側が大きく価格転嫁しない対応をとったこともあり、輸出額は想定よりも落ち込んでいない」と話す。米国の自動車需要は堅調で、中型ガソリン車など低単価の車種は輸出額と台数がともに増えた。

9月には米国が日本に課す自動車関税が15%に下がった。塚田氏は中部圏の今後の自動車輸出について「足元の水準から横ばいで推移するのではないか」との見通しを示す。財政出動に積極的な高市早苗政権が発足し、円安がさらに進めば輸出を下支えする可能性もある。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。