VWグループの高級車ポルシェの新型車「911ターボS」(9月、独南部ミュンヘン)

【フランクフルト=林英樹】ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)が30日発表した2025年7〜9月期決算は営業損益が12億9900万ユーロ(約2300億円)の赤字(前年同期は28億3300万ユーロの黒字)だった。グループの高級車ポルシェの電気自動車(EV)戦略転換に伴う引当金と米国の高関税対応で75億ユーロの追加コストが生じ、赤字に転落した。

ポルシェは30年までに新車販売の80%以上をEVとする目標を掲げていたが、9月に事実上撤回した。「カイエン」など人気車の後継エンジン車モデルのほか、新たな多目的スポーツ車(SUV)のエンジン車とプラグインハイブリッド車(PHV)を開発し、30年代まで販売を継続すると決めた。

米関税で50億ユーロ負担

VWはポルシェの開発コスト増などで47億ユーロの減損損失を計上した。さらにトランプ米政権の関税政策の影響によって25年12月期通期で最大50億ユーロの追加コストが生じるとみている。7〜9月期の最終損益は4億8200万ユーロの赤字(前年同期は11億9300万ユーロの黒字)だった。

1〜9月期の売上高営業利益率は2.3%で、前年同期より3.1ポイント下がった。アルノ・アントリッツ財務担当役員はポルシェの一時的な減益要因を除けば営業利益率は4.5%だったと指摘し「それでも将来への十分な投資には足りない。新たな負担はコスト削減策で相殺する必要がある」と語った。

欧州でEV需要が回復したのに加え、米国で高関税前の駆け込み需要が起きたことから1〜9月の新車販売は658万台と前年同期比で2%増えた。同期の売上高は1%増の2386億6900万万ユーロ、純利益は35億2300万ユーロと半減した。

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NIKKEI Mobility

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