オンラインで記者会見するデンソーの松井副社長(31日)

トヨタ自動車系の主要8社が31日に2025年4〜9月期の連結決算(国際会計基準)を発表し、デンソーや豊田自動織機など3社が通期の純利益予想を下方修正した。主要顧客のトヨタ自動車の生産が好調なものの、品質費用などを計上した企業の業績が下振れする。米国の関税政策への対応は不透明感が後退しているが、半導体などの供給リスクがなおくすぶる。

デンソーは26年3月期の純利益が前期比19%増の4970億円になりそうだと発表した。期初予想の23%増の5150億円から180億円下方修正した。下方修正だが、純利益は過去最高を維持する。

トヨタの生産や足元の円安傾向が追い風だったが、品質費用の引当金が重荷となった。記者会見した松井靖副社長は「品質費用(への対応)は経営課題だ」と述べた。

豊田自動織機も純利益の通期予想を前期比31%減の1800億円と、従来予想から600億円引き下げた。フォークリフト用エンジンの認証問題に関連し、米国の集団訴訟の和解金や顧客への対応費用が595億円の営業減益要因となる。

トヨタ紡織も前期比2.7倍の450億円と50億円引き下げた。車のシート部品に関連するリコール(回収・無償修理)のほか、トヨタのブラジル工場が自然災害で稼働できなくなったことなどを考慮した。

もっとも、こうした一時的な損失がない企業は好調だ。豊田合成や愛知製鋼など3社が純利益予想を上方修正した。豊田合成はトヨタへの販売増や原価低減効果が寄与し、純利益の通期予想を従来から50億円引き上げた。愛知製鋼も4〜9月期の好調を踏まえて5億円引き上げた。

トヨタの25年4〜9月の世界生産は前年同期比6%増の498万台だった。24年は車の量産に必要な国の「型式指定」での認証不正などで落ち込んでいたが、挽回が進む。部品や素材を納入する各社への利益寄与度は大きく、下期も同水準を維持するとの見方が強い。

期初に想定した為替レートより円安方向に進んだことも利益を押し上げた。豊田通商は通期の純利益予想を前期比1%減の3600億円と200億円引き上げた。想定為替レートは1ドル=135円から145円に変更した。ジェイテクトも為替レートの変更で売上高を上方修正した。

足元で懸念されていた米国の関税影響は不透明感が後退している。各社は関税コストの精査や物流網の変更などを通じて圧縮したのち、完成車メーカーにほぼ価格転嫁できる見通しだ。

アイシンは26年3月期に関税影響で200億円の減益要因を見込むが、既に4〜9月期に194億円を計上した。関税を支払った後、完成車メーカーからコストを回収するのに2〜3カ月程度のずれがあるという。近藤大介執行役員は業績への影響について「今が先行負担のピークだと考えている」と話す。

新たな供給網のリスクもくすぶる。オランダ政府は同国に本社を置く中国資本の半導体メーカー、ネクスペリアを管理下に置くと決めた。中国政府は対抗措置として中国で生産する同社製品に輸出規制を敷いた。

豊田織機の高木博康執行職は「あらゆるセグメントの製品に関係しており、自社や取引先の在庫を確認している。今後の状況によっては代替品も含めて対応していかなければならない」と語った。一方、デンソーの松井副社長は「代替品は99%特定できている状態で、ほぼ代替できる」とした。

同日発表した4〜9月期の連結決算はデンソーと豊田織機を除く6社が増益だった。アイシン、豊田合成、豊田通商が過去最高益だった。トヨタの高水準の生産が寄与した。

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