民放キー局5社の2025年4〜9月期の連結決算が11日出そろった。フジ・メディア・ホールディングス(HD)を除く4社が増収増益となり26年3月期の業績予想を上方修正した。広告収入が堅調だった。各社が成長戦略の柱に位置付けるアニメや映画など知的財産(IP)の配信や海外販売が伸び、イベントや権利収入も業績を押し上げた。放送だけに頼らないコンテンツ関連事業が収益源として定着しつつある。
TBSHDの25年4〜9月期は放送収入、配信広告収入ともに好調で売上高が前年同期比7%増の2106億円、純利益は同35%増の454億円だった。
日本テレビHDの売上高は8%増の2344億円、純利益は65%増の263億円となった。傘下の日本テレビ放送網が23年に子会社化したスタジオジブリ関連の興行収入が大きく伸びた。日テレHDはIPビジネスの売上高構成比を24年度実績の29%から33年度に43%まで引き上げる目標を掲げる。

テレビ朝日HDは売上高が8%増の1655億円、純利益は90%増の146億円だった。テレビ番組配信サービス「TVer(ティーバー)」などのデジタル広告収入が伸びたほか、動画配信向けのコンテンツ販売が好調だった。主なIPでは人気アニメ「クレヨンしんちゃん」関連がインドで伸びた。
テレビ東京HDは、アニメや配信事業を軸に海外展開で権利収入を積み上げて売上高が8%増の799億円、純利益は2.9倍の49億円となった。放送以外の収益比率を前年同期に比べて約3ポイント高めて32%とした。吉次弘志社長は11日の決算説明会で「様々なIPを持つコンテンツ企業として価値を再訴求していきたい」と強調した。
人権問題で揺れたフジ・メディアHDは純利益が36%増の171億円だった。政策保有株の売却益が出たほか、不動産事業が好調で利益を下支えした。一連の問題を受けた広告収入減が響き、売上高は7%減の2486億円となった。
海外に成長活路
各社とも国内市場の頭打ちを背景に成長を海外に求める動きが活発だ。
TBSHDは9月、ベトナムの国営放送局との提携を発表した。スポーツバラエティー番組「SASUKE(サスケ)」などのベトナムでの放送や配信、TBSが手掛けたドラマのリメイクなどで協業する。
日テレHDはバラエティー番組の企画開発を行う制作スタジオが海外向けに開発した番組2つの売り込みを始めた。米ロサンゼルスにはビジネス拠点も設置した。テレ東HDもアニメなどの海外展開で「グローバルIPメディア」となる目標を掲げる。
広告をはじめとする国内市場の成熟化を背景に、IPによる収益多様化や海外展開の動きは民放でさらに広がる可能性が高い。
(田中瑠莉佳)
【関連記事】
- ・テレビ東京HD純利益28%増で過去最高 26年3月期、10円増配
- ・フジHD26年3月期の営業赤字幅縮小 広告回復、不動産分離は明言せず
- ・民放キー局、4社が広告収入持ち直し アニメ・海外が成長の活路
- ・日テレ・TBSが新会社、ネット広告手法で柔軟にCM枠販売 異例の連携
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。