
東北大学の奥村正樹准教授らの研究チームは11日、生命の体を作るたんぱく質の形が正常かチェックする「工場」が細胞内にあったと発表した。この仕組みが働かないと、血糖値を下げるホルモン「インスリン」に異常が生じ、糖尿病につながる恐れがある。仕組みを整える物質は治療薬になると期待される。
研究成果が同日、国際科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」に掲載された。研究は日韓英の国際連携で進められ、計17研究グループが参加した。
たんぱく質は正しい形でないと、役割を発揮できない。例えばインスリンの形に異常があると、血糖値を下げる役割が果たせず糖尿病につながる。アルツハイマー病やALS(筋萎縮性側索硬化症)も異常なたんぱく質が関わっているとされる。
奥村准教授らの研究チームはヒトの細胞を使った実験で、「PDIA6」というたんぱく質が細胞内で一時的に集合すると突き止めた。この集合体をインスリンに加えると、インスリンが正しい形に形成されやすくなった。
細胞はもともと、たんぱく質の製造を担う「小胞体」やエネルギーを生む「ミトコンドリア」などの区画に分かれている。小胞体の中でPDIA6は集合して、新たな区画を作り、品質管理の機能を担っていると考えられる。
奥村准教授は「細胞内で区画化した『工場』ができると示したのは初めてだ」と研究の意義を強調した。今後はPDIA6を集合させる薬剤などを開発し、効果を調べていく。
たんぱく質が正常かどうか確かめる品質管理は重要な研究課題だ。大隅良典博士は不要なたんぱく質が分解されてリサイクルされる仕組みを明らかにし、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
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