政府税制調査会(首相の諮問機関)は12日、専門家会合を開き、法人税の租税特別措置(租特)の一つである「研究開発税制」について議論した。企業が研究開発費を増やすと税額がより安くなる仕組みについて、財務省が「インセンティブとして機能していないことが示唆される」とする分析資料を新たに提示した。
研究開発税制は、企業の研究開発促進を図り、研究費の増減に応じて本来支払う法人税額から通常1~14%を控除する。控除率の上限は2025年度までの時限措置として10%から14%に上乗せされており、所管する経済産業省が上乗せの延長を求めている。
財務省はこの日、22年度の法人税の申告データに基づき、研究開発税制の適用を受けた企業について、研究費の増減割合の状況を示した。それによると、全体として20年度から22年度にかけてプラス方向で中央値は約3ポイントの増。ただ、研究費の半分を占める人件費と資材費の上昇分と言えるとしている。また、増減が0%前後の企業が最も多く、控除率が上がる増減割合(当時は9・4%)の近辺では企業は増えていなかった。
委員からは「インセンティブが期待通りに働いていないなら、仕組みを実態に合わせる必要があるのでは」といった意見が出た。
与党税調は今後、26年度税制改正大綱に向け、政府税調での議論も踏まえて制度のあり方を検討する。与野党6党は、ガソリンの暫定税率の廃止に伴う代替財源として法人税関係の租特の見直しなどを検討し、25年末までに結論を得ることで合意している。【井口彩】
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