中国などアジアからの観光客で混雑する福岡空港国際線ターミナル。観光業者からは日中関係悪化の影響を懸念する声が聞かれた=福岡市博多区で2025年11月17日午後3時21分、平川昌範撮影

 台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を受け、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけた。中国の航空会社が日本行き航空券の払い戻しや変更手続きを受け付け、日本の旅行会社にもツアーのキャンセルがあった。国内では現時点で目立った影響はないものの、春節(旧正月)を見据え、インバウンド(訪日外国人)関連業者からは「影響が出るとすればこれから」と不安の声も上がっている。

 中国国際航空など中国の大手航空会社3社は、年末までに一部の日本の空港を発着する便の航空券について、無料での払い戻しや変更手続きを受け付けると明らかにしている。同社の日本支社は「中国政府の注意喚起を受け、乗客への救済措置として実施した。(例年と比べ)キャンセル数に変化はなく、状況を注視していきたい」と話した。日本航空と全日本空輸も現時点でキャンセル数に大きな変化はないとしている。

 一方、中国人向けに小規模ツアーを開催する東京都内の旅行会社は「15日以降に1件キャンセルがあったが、心配していない。政治と旅行を分けて考える人が多いのでは」と冷静に話した。訪日中国人のツアーを手がける旅行大手「エイチ・アイ・エス(HIS)」の広報担当者は「今後、団体旅行客への影響が懸念される」としている。

中国などアジアからの観光客で混雑する福岡空港国際線ターミナルの到着ロビー。観光業者からは日中関係悪化の影響を懸念する声が聞かれた=福岡市博多区で2025年11月17日午後2時57分、平川昌範撮影

 多くの訪日観光客が訪れる東京・浅草の浅草観光連盟は「旅行客が減った実感はない。影響が出るとすればこれから。数週間は変化を見たい」と話す。

 海外からの旅行客が多い江の島がある神奈川県藤沢市。県観光協会の推計では、市内を訪れる4割近くが中国からの旅行者という。藤沢商工会議所の三ツ橋利和・専務理事は「もし影響がでるようなら関係団体と連携して対応を考えることになるのだろうが、旅行など民間レベルの交流は滞ることなく続いてほしい」と話す。【白川徹、稲垣衆史、澤圭一郎】

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