絶滅のおそれがある希少種の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議が24日からウズベキスタンで始まった。欧州連合(EU)などが提案する全てのウナギを対象とする取引規制が議論され、ウナギの約7割を輸入する日本は反対の立場で、採決の行方が焦点となる。
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ウナギを巡っては、かつて日本で多く流通していたヨーロッパウナギの個体数が減少。2007年にワシントン条約に基づき、輸出の際にその国が発行する「許可書」が必要となる「付属書2」に掲載された。
さらに欧州連合(EU)などは今年6月、現在、日本で主流のニホンウナギを含む「ウナギ属」の全種を「付属書2」に掲載するように提案した。ニホンウナギなどは減少傾向で、ヨーロッパウナギと外見が似て、偽って取引されることなどを理由とした。
事務局、規制案の「採択を勧告」
会議に先立ち、ワシントン条約事務局は10月中旬、EUなどの提案について「採択を勧告する」との最終評価を公表した。11月27日に予定する会議の委員会で、加盟する約180の国と地域のうち、投票した3分の2以上が提案に賛成すれば、採択される。
12月5日の本会議で最終決定すると、2年後の6月ごろから全てのウナギの国際取引に「許可書」が必要で、稚魚や成魚のほか、かば焼きなどの加工品も対象となる。
水産庁はウナギの資源量は十分確保されているとして、反対する。昨年、国内で供給された約6万1千トンのうち、約7割が輸入で、国別では中国が約9割を占める。取引が規制されると、輸入が滞り、ウナギの価格高騰を懸念する指摘もある。
水産庁幹部「見通し付かない」
水産庁幹部は「投票がされるまで、見通しはつかない。政府一丸となって全力を尽くすしかない」と話す。鈴木憲和農林水産相は21日の閣議後会見で、在日大使館向けの説明会を20日に開き、57カ国の関係者が参加したことを明らかにした。
全国に300店舗以上を展開する「鰻(ウナギ)の成瀬」の運営会社の山本昌弘社長は、環境や資源保護は課題としつつ、「ウナギ(の生態)については、正直まだ分かっていないことが多い」として、「規制は時期尚早では」と話す。
一方で、日本は世界最大のウナギの消費国とも呼ばれ、中央大の白石広美研究員は「ヨーロッパウナギの密輸だけでなく、アメリカウナギやニホンウナギでも違法な漁業が横行し、資源管理も十分ではない」と指摘する。
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