白い菊が、青やピンクに染まる。染料を混ぜた水を吸わせて花を色づける「カラーリングマム(染め菊)」を手がける佐賀県唐津市の千喜田樹理さん(37)は、アニメや漫画が大好きな「オタク女子」。美しい色合いは「『推し活』のアイテムになる!」と直感し、染め菊を販売する「千紫万紅(せんしばんこう)」を設立した。
結婚を機に2018年に福岡市から唐津市に引っ越し、夫の「千喜田花卉(かき)園」を手伝ってきました。周囲から「えらいね」と言われても、自分の働きが十分に認められていない気がしていました。
そんな折りに染め菊に出合いました。夫が売れ残った白菊を、黄色の液で染めて遊んでいた時、「これ何? すごいね。きれい」と一目ぼれしました。「私らしいことをしたい」という気持ちもあり、染め菊への挑戦を決めました。
染め菊は、収穫した菊を容器に入れ、染料の入った水を吸わせて作ります。青色の染料なら青い花、染料を混ぜれば色のバリエーションが広がります。レインボー色を作ることもできます。
私はアニメや漫画が好きなオタク女子です。花卉園でも日ごろから、「この花の色は推しのイメージカラーと一緒じゃない?」と思いながら仕事をしていました。カラフルに変身する染め菊を推し活に使おうと考えたのは、自然な流れでした。
現状は、自宅や贈答用に買ってくれる人が多く、推し活向けのビジネスモデルは確立されていません。試行錯誤しながら、どんなニーズがあるのかを探っています。
10月には佐賀県の協力で、バスケットボールBリーグ1部(B1)の佐賀バルーナーズの試合会場でテスト販売しました。「これは〇〇選手が選んだ色です」とファンに伝え、1本800円で91本売りました。売り上げの一部はチームに寄付しました。
アニメ「鬼滅の刃」の登場人物のイメージカラーで、染め菊を作る動画をアップしたこともあります。合計1万回ほど再生されました。推し活との相性はいいと考えています。
私の住む唐津市厳木町は過疎化が進んでいます。「カラーリングマムといったら厳木だよね」と、推し活の聖地になれば最高です。息子や娘を育んでくれた厳木に恩返しがしたい。雇用を生み、地域地域おこしにつなげたいです。【聞き手・小山由宇】
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起業家の活躍の場が、東京から各地に広がっています。さまざまな課題の解決に向け、地域から挑戦するスタートアップ企業や新規事業に取り組む経営者を紹介します。=随時掲載
略歴
ちきた・じゅり 1988年福岡県出身。2008年にブライダル系会社に就職。18年に佐賀県に移住し、24年に千紫万紅を設立。
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