2026年度予算の編成などに関する建議を片山さつき財務相に提出後、記者会見した増田寛也・財政制度分科会長代理=東京都千代田区の財務省で2025年12月2日、加藤結花撮影

 財務相の諮問機関、財政制度等審議会(会長・十倉雅和住友化学相談役)は2日、2026年度予算の編成などに関する建議(意見書)を片山さつき財務相に提出した。財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化達成を強く促す文言は消え、従来の建議から表現が後退。「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権への配慮がにじむ形となった。

 PBは、社会保障や公共事業などの行政サービスにかかる政策経費を、借金に頼らず税収などでどれだけ賄えるかを示す指標だ。政府は25~26年度に黒字化する目標を掲げてきたが、高市首相は単年度ごとの目標ではなく、債務残高対国内総生産(GDP)比の引き下げを重視する。現在のような物価高が続けば見た目のGDPが膨らみ、PB黒字化よりも目標を達成しやすくなるためだ。その点、財政規律を重んじる財政審でPBをどう取り扱うかが注目されていた。

 建議では、財政運営について「PBの改善を進めながら、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくこと」に加え「PBの状況を確認・検証しつつ、毎年度の財政運営に臨むこと」も重要だとした。PBを重視する姿勢は示しながらも「黒字化達成に向け、不退転の覚悟を持って予算編成に臨むことが求められる」としていた前年の記述はなく、トーンが弱まった。

 この日、記者会見した増田寛也・財政制度分科会長代理は「PBが重要な指標であるという認識は変わっていない」と強調した。そのうえで「想定外の有事に備えるためにも、債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、財政余力を確保することが重要だ」と述べた。

 また建議では、社会保障制度改革に向け、高齢者の医療費に関し「70歳以上の患者の自己負担を現役世代と同様の3割にすべきだ」と提言した。現役世代の社会保険料負担を軽くし、年齢による自己負担割合の不公平感を是正する狙いだ。

 26年度の診療報酬改定に向けては、病院よりも利益率が高い個人経営クリニックなどの診療所の報酬を適正化する必要があるとした。社会保障制度改革は、自民党が連立を組む日本維新の会が意欲的で、今後議論が加速する可能性がある。【加藤結花】

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