浸水地域を歩く人々=スリランカの最大都市コロンボで2025年11月30日、AP

 タイやインドネシアを中心にアジアで11月下旬に相次いだ豪雨による水害は、死者・行方不明者が2000人以上に達し、住民の生活や地域経済にも深刻な影響を及ぼしている。経済損失は両国だけでも計3兆円を上回る見通しだ。

 タイのエクニティ財務相は1日、今回の洪水による国内の経済損失が5000億バーツ(約2兆4400億円)に上るとの試算を公表した。タイ政府によると290万人以上が影響を受けたとされる。

 タイ南部サトゥーン県の実家が被災したバンコク在住の女性(25)は、「(実家が)完全に浸水した」と肩を落とした。実家で小さな飲食店を営む母親と弟は無事だったが、冷蔵庫などの家電は全て故障したという。店の備品も使えなくなったといい「生活を立て直せるか不安だ」と語った。

11月下旬にタイ南部で発生した大規模な洪水で、浸水被害を受けた民家=住民家族提供

 現地メディアによると、被害はゴムやエビ養殖などの主要産業にも広がっている。南部は国内のエビ生産量の1割超を占めるが、今回の洪水で1万3000軒以上の養殖業者が被害を受け、損失は少なくとも10億バーツ(約50億円)に上るという。被害が集中した南部の主要都市ハジャイでは多くの観光客が足止めされるなどし、観光業への長期的影響も懸念されている。

 被害はインドネシアでも甚大で、現地の独立系シンクタンク「CELIOS」は、経済損失が約68兆6700億ルピア(約6400億円)に達するとの推計をまとめた。

水が引いた後の室内。浸水で家電はすべて故障していたという=タイ南部サトゥーン県で2025年11月下旬(住民家族提供)

 被災したスマトラ島は世界有数のパーム油産地で、生産やサプライチェーンへの影響も危惧される。被害拡大の背景に、違法な森林伐採で流域の土地がもろくなっていた可能性も指摘され、政府への批判も高まっている。【バンコク国本愛】

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