PFASの一種「PFOA」が製造されていたダイキン工業淀川製作所=大阪府摂津市で2025年12月22日午後4時9分、田中韻撮影

 大手空調メーカー「ダイキン工業」淀川製作所(大阪府摂津市)周辺から発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、近隣住民らが23日、同社に健康調査や汚染対策などを求める公害調停を大阪府公害審査会に申請した。弁護団によると申請人は800人以上。企業を相手取ったPFASに関する公害調停は全国初という。

 PFASは1万種類以上とされている有機フッ素化合物の総称。耐水性や耐油性に優れ、フライパンのフッ素樹脂加工や泡消火剤などに使用されてきた。自然界ではほとんど分解されず長期間残存するため、「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれる。海外では発がん性など健康への影響も指摘され、国際的に製造が規制されている。

 同社は1960年代からPFASの一種「PFOA」を取り扱い、80年代には製造も開始。はっ水・はつ油剤やフッ素ポリマー製造時の添加剤として使用していた。12年に製造、使用を終えたが、その後も淀川製作所付近の地下水から国が定めた指針値(1リットルあたり50ナノグラム以下)の400倍を超える高濃度のPFASを検出した。

高濃度のPFASが検出されたダイキン工業淀川製作所周辺の水路=大阪府摂津市で2025年12月22日午後4時13分、田中韻撮影

 住民や医師らでつくる団体が2023年に近隣住民や元ダイキン従業員らを含む1190人の血液検査を実施したところ、3割以上の血中濃度が米国が定める指標値を超過していることが判明。更に一部の元従業員が間質性肺疾患を発症していたことが明らかとなった。

 公害調停は、公害紛争処理法に基づき、専門家などでつくる調停員会の仲介によって当事者同士が紛争を解決する手続き。住民側は同社に対し、PFAS汚染に関する資料の開示や継続的な健康調査の実施などを求める。

 PFASを巡っては、沖縄県の米軍嘉手納基地周辺などから検出され、地元の市民団体が公害調停を申請している。【田中韻】

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