年末を迎えた貴金属相場は、金に続き、プラチナや銀も最高値を更新し、急上昇している。高騰の背景や2026年の見通しを専門家に聞いた。
国内価格の指標となる田中貴金属工業(東京)によると、店頭小売価格(1グラム)は、金が12月24日に2万5015円の最高値を記録。プラチナも24日に1万3146円、銀は26日に412円の最高値をそれぞれ付けた。
25年は年初から金の高騰が目立ったが、プラチナや銀も秋ごろから上昇を強め、12月に急騰した。年初の価格と比べると金は1・8倍だが、プラチナは2・7倍、銀も2・6倍に跳ね上がった。
田中貴金属の担当者は高騰の理由について「実質資産としての安心感から資金が流入した」と分析。金については、米国の利下げ観測やインフレ懸念に加え、トランプ政権がベネズエラへの軍事圧力を強めるなど地政学リスクも価格を押し上げる要因となっているという。
プラチナが最近急騰しているのは、欧州連合(EU)が12月16日にエンジン車の新車販売を35年に原則禁じる方針を撤回する案を公表したことが影響していそうだ。プラチナは、排ガスの有害物質を除去する触媒としてエンジン車の部品に利用されており、EUの方針変更で需要が高まるとの見方が広がった。
銀も精密機械に利用されており、米国が関税をかけるとの懸念から駆け込み的に買われているようだ。
歴史的な上げ相場の中で、田中貴金属の今年の純金積み立ての申し込み数は、前年の約1・5倍(12月24日時点)に増加した。
26年の貴金属相場はどう動くのか。楽天証券経済研究所のコモディティアナリスト、吉田哲さんは「総じて上昇」と予測する。「金相場は米国が利下げを続けるとの思惑が強まる一方、ベネズエラやイランを巡る地政学リスクが大きくなる」と指摘。金利低下でドルの魅力が薄れるとともに、世界情勢の不安定化で資金の逃避先としても買われやすくなるとの見方だ。金につられる形で、プラチナや銀も上昇する可能性がある。
大手地金商の小売価格は、ドル建ての国際価格を基に為替などを加味して決まる。ドル円相場を現状の1ドル=155円として、26年の最高値を吉田さんに予測してもらったところ、金「2万9000円」▽プラチナ「1万5000円」▽銀「483円」(いずれも12月25日時点)――。
為替が円高に振れれば円建ての価格は下振れし、円安が進めば上振れ要因となる。足下の急騰は、円安が拍車をかけており、来年の相場も為替や米国の金利動向が大きなカギとなりそうだ。【嶋田夕子】
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