防衛省は26日、海上自衛隊の潜水艦のエンジン燃費性能に関する検査データを改ざんしていたとして、川崎重工業を同日から3月11日まで2カ月半の指名停止処分にしたと発表した。海自の潜水艦は25隻体制で、そのエンジンは川重製を採用。川重は哨戒機や輸送機も製造しており、防衛産業の中核を担う企業の指名停止は異例となる。

 防衛省や川重によると、川重は潜水艦エンジンの燃費性能をチェックする陸上試験で、仕様書が求める基準を満たしていないにもかかわらず、数字を改ざんして報告していた。

 不正は1988年から2021年まで続き、不正があったエンジンは潜水艦33隻分の66台にのぼるという。防衛省は「長期にわたる組織的な不正」と認定した。

 燃費性能が悪くなると、潜水艦の航続距離が短くなる可能性があるが、運用面や安全性への影響はないとしている。

 防衛装備庁の24年度中央調達によると、川重の契約実績は6383億円で2位。指名停止になると、自衛隊の運用に影響が出ない範囲で防衛省発注事業の入札に参加できなくなる。防衛省は、契約違反に相当する額の返還要求も検討している。

川重の橋本社長 「心から深くおわび」

 一方、川重も26日、外部の弁護士による特別調査委員会による最終報告書の内容を公表。潜水艦でのデータ改ざんに加えて、商船や艦艇の新造・修理などで、予算が少額の工事を予算が潤沢な工事に付け替えて記録していたことが新たに分かったと発表した。コンプライアンス違反にあたり、約40年前から行っていた可能性があるという。

 今回新たな不正が判明したものの、役員の処分は昨年12月に終えているとして、追加の処分は行わない。従業員の処分は「事案の内容を確認して検討する」(広報)としている。

 橋本康彦社長は「当社グループの度重なるコンプライアンス違反により、皆様にご心配、ご迷惑をおかけしておりますこと、大変申し訳なく、心から深くおわび申し上げます」とのコメントを出した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。