
会社の資産を私的な目的で使うなどの不正行為について、大手会計事務所のKPMGが2025年に実施した世界調査の結果を公表した。不正を誘発する環境要因として、権限の集中や孤立などの影響が大きいことがみえてきた。
「不正行為者に関するグローバル調査」で、各国のKPMGの不正調査専門家にアンケートした。不正行為関連のKPMGの調査はこれまで日本や欧州など特定地域を対象にしたものはあったが、全世界を対象とするのは初めて。
不正行為者の性別は男性が81%を占め、年齢層では36〜45歳(37%)、46〜55歳(30%)の比率が高かった。KPMGは不正行為者の人物像について「周囲から敬意を持たれており、勤続年数が長く、誠実そうに見え、周囲の人物が疑いもしないような人物であることが多い」と分析する。
不正行為を種類別に集計すると「資産の不正流用」や「会社からの窃盗」などが多かった。「文書捏造(ねつぞう)」や、売上高の架空計上などの「不正会計」関連も目立った。不正の動機では「個人の金銭的利益、欲」と「強い関心または出来心」の2つが突出して多かった。
注目すべきは不正発生の背景だ。専門家は「不正のトライアングル」と呼ばれる考え方をベースに分析することが多い。「動機」「機会」「正当化」の3つの環境要因がそろうと不正が発生するという考え方だ。
不正行為者に関連する環境要因のうち何が問題だったかを聞くと「権限に制限がない」が37%で首位だった。不正のトライアングルにおける「機会」の一つだ。

大きな権限を持つ人による不正は被害額が大きくなる傾向があることも分かった。「権限に制限がない」割合は被害金額100万〜200万ドルでは9%にとどまったが、200万〜500万ドルは11%、500万ドル超では29%と高まる。
ほかの環境要因としては「孤立した業務環境」も23%と3番目に高かった。これもトライアングルの「機会」に該当する。権限が大きい人が周囲の目が届きにくい業務を担う場合に不正リスクが高まることを示唆する。
ガンホー・オンライン・エンターテイメントは25年8月、幹部級の従業員がガンホーを発注者、自身を受注者とする架空発注を繰り返し、計約2億4000万円を不正に得ていたと発表した。外部への発注や支払いを部署外からチェックする機能がなかった。
東芝テックは25年2月、国内支社に勤務する従業員が顧客から受注があったように見せかけて商品のパソコンを着服し、売却していたと発表した。損害額は約2億円に上った。米アマゾン・ドット・コムでも従業員が1800足以上の靴を盗んでオンラインで売却した不正が発覚した。
KPMGの調査では不正が検知された経路としては「内部通報、ホットライン」(28%)や、承認プロセスを意味する「マネジメントレビュー」(24%)などが多かった。日本では改正公益通報者保護法が25年6月に成立。一定規模以上の事業者に対する内部通報担当者の配置などの体制整備の義務が強化された。違反には勧告・命令や罰則があり得る。
KPMGフォレンジック&リスクアドバイザリーの西嶌宏之代表取締役パートナーは、不正抑止に向けて「通報窓口などのハード面の整備に加えて、従業員向けの倫理教育などソフト面の取り組みも重要だ」と強調する。
(森国司)
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