プラントメーカーの高田工業所(北九州市)は、会社の知名度向上を目指し、国内トップレベルのスポーツ選手を対象にした「アスリート採用枠」を導入している。第1号として2025年春に入社した女子やり投げ選手の山元祐季さん(25)は、競技と仕事を両立させながら地域貢献にも取り組んでいる。
高田工業所は企業との取引が中心で、人材獲得に向けた知名度の向上が大きな課題となっている。社員にアイデアを募ったところ、スポーツ選手の採用案が寄せられた。そこで日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」を利用し、北九州で競技継続を希望していた山元さんとのマッチングが成功した。
鹿児島市出身の山元さんは、小・中学時代は野球に明け暮れ、高校からやり投げに取り組んだ。身長167センチのバランスの取れた体格と、持ち前の強肩を生かして頭角を現し、北九州市の九州共立大に入学。4年時には陸上日本学生個人選手権で優勝した。
その後、ウエートトレーニングの疲労が重なり右肩を故障したが、手術やリハビリを経て復帰。同大大学院2年の24年に日本選手権4位、日本学生対校選手権では優勝を飾った。一時は教員になることも考えたが、恩師がいる北九州を拠点に選手を続けようと決意。高田工業所に入社することとなった。
現在は人事の採用担当として、大卒や高卒人材の獲得に向けて多忙な日々を送る。各地に出張することもあるが、普段は午前中に業務をこなし、午後は大学の練習場で4~5時間のトレーニングに励む。
25年のシーズンは国内大会に加え、スイスやポルトガル、ポーランド、中国などに遠征した。思うような結果が出ず、悔しい1年となったが、シーズン後は地域貢献の一環で、一日警察署長を務めた。山元さんは「入社1年目では考えられないほど、さまざまな経験をさせていただいている。会社の応援は本当に心強い」と語る。
一方、高田工業所にとっても初のアスリート採用で、「手探りの応援」(担当者)と話す。大会に同行した幹部社員は「競技場のどこに陣取って応援すればいいのやら。ただの観戦者になっていた」と振り返り、別の社員も「みんなで応援に駆けつけたものの、競技後は山元選手を待たずに引き上げてしまった」という。
山元さんの当面の目標は、壁となっている「60メートル」超えと、28年のロサンゼルス・オリンピック出場だ。「競技と仕事の両立はもちろんだが、会社の期待に応え、自慢に思ってもらえるような選手になりたい」と語り、高田寿一郎社長(64)も「支援に力を入れたい」と期待する。
JOCによると、10年に始まったアスナビの制度を活用した採用は、内定者を含め248社・団体の451人(1月5日現在)に上る。高田工業所は今後もアスリート採用を進める考えだ。【橋本勝利】
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