東武鉄道社長 都筑豊氏
東武鉄道は日立製作所と協業して生体認証サービス「サクララ」の普及を図っていて、あらゆる場面の決済手段になることを目指している。交通系ICもコード決済を導入していく中、都筑豊社長は「生体認証の時代は間違いなく来る」と話す。決済手段も多様化する中で今後の方針を聞いた。 都筑豊氏(つづき・ゆたか) 1984年日大理工卒、東武鉄道入社。17年常務。23年社長

――顔認証で改札を通過できるシステムを導入しました。

「2025年11月13日から東武日光線と東武宇都宮線の、まずは定期券利用で顔認証を始めた。交通系ICに登録された定期券の情報と顔の生体情報を連携して改札をタッチ動作なしで通過できる。いきなり首都圏でやるのも度胸がいるのでまず、相互乗り入れがない、自社の単一区間で始めた」

東武鉄道が顔認証で導入するカメラを内蔵した改札

――東武鉄道は顔認証を含めた生体認証サービス「サクララ」の普及を進めています。

「24年に始めたのは指の静脈を認証することで買い物の決済ができるサービスだ。事前にクレジットカード情報と生体情報を連携しておくことで使え、手ぶらで買い物ができる。商業施設で買い物をする際に、現金はもとよりカードや交通系ICを持っていなくても決済できる。酒類やたばこを購入する時の年齢確認もできる」

「東武鉄道はグループに百貨店やホテルなどがあり、生体認証を普及させていける基盤がある。すでに1万人以上の登録者がいる。ファミリーマートでも導入してもらえる予定だ。将来は2000万人が利用する社会インフラにしたい」

――既に様々な決済手段があり交通系ICのSuica(スイカ)とPASMO(パスモ)も共通のコード決済機能を26年に始めます。

「交通系ICは始まってから20年近くがたち、鉄道利用の9割近くは交通系ICカードだ。交通系ICは欠かすことのできないシステムになった。このサービスをより充実させていこうとして始めるのがこのコード決済だ。上限額もこれまでの2万円から30万円になる」

「サクララがすぐに交通系ICにとって変わることはないだろう。ただ生体認証の時代は間違いなく来ると思う。交通系ICだけを一辺倒でやっていては世の中から遅れていってしまう。中長期の視点でみれば今からデジタルトランスフォーメーション(DX)に手を付けていけば先行者利益も出てくる」

記者の目 生体認証、鉄道事業と相性よい

鉄道会社の事業はホテルや観光、小売業など多岐にわたる。消費者との接点も多い。生体認証は鉄道会社の事業と相性がよく、消費者に繰り返し使われることで、完成度の高いものになる。鉄道系ICカードも当初はそうだったように、新たな技術はリスクと常に隣り合わせだ。リスクに対する感度と十分な対策が必要だ。(鷲田智憲)

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