
立命館大学の山末英嗣教授らは、半導体の製造過程で生じた廃棄物のシリコン粉末を使って「黄リン」を生成する技術を開発した。黄リンの製造にはコークスなどをセ氏1400度以上で加熱する必要があるが、シリコン粉末を使う今回の手法はセ氏1000度程度の加熱で済む。低コストな製造にもつながる可能性がある。
黄リンはリン鉱石から作られる物質で、近年ではバッテリー材料のほか、高性能半導体向けの試薬や医薬品などにも使われるなど需要が高まっている。リン鉱石の世界生産量のうち約5割を中国が占める。日本は国内需要のほぼ全量を海外からの輸入に依存している。
リン鉱石を還元剤となるコークスなどの炭素を配合して加熱、黄リンを回収する従来の手法では、セ氏1400度以上の高温加熱が必要となる。大量のエネルギーが必要となるほか二酸化炭素(CO2)の排出も問題となっていた。
今回、研究チームは半導体の製造過程で生じるシリコン粉末が、コークスなどよりも化学反応の効率が高い能力があることに着目した。シリコン粉末を還元剤とした使った実験では、セ氏1000度程度で化学反応が起き、黄リンを回収できることを実証した。有害な有機リン化合物も検出されなかったという。
今回の手法を使いリン鉱石から黄リンを生成できるようになればCO2の排出量を従来手法と比べて約50%減らせると試算している。
シリコン粉末は半導体製造の過程でシリコンウエハーを切り出す際に生じる。世界で年間50〜60万トンのシリコン粉末が廃棄物として出されており、今後も増え続ける問題が指摘されてきた。
今回の新技術は国内で調達しやすいとされる粗リン酸と廃棄シリコン粉末から黄リンを作る手法にも適用できるとみる。山末教授は「(経済安全保障の観点から)レアアース(希土類)と同様な問題が起きないよう、早めに対策をしておく必要がある」と指摘する。
研究成果は米国化学会の学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載された。
【関連記事】
- ・半導体原料の黄リン、東北大と住商がリサイクル技術研究
- ・排せつ物からリン 日立造船やクボタ、供給不足に対応
- ・黄リン価格年初比7割高 半導体製造コスト押し上げも
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。