いわき信用組合(福島県いわき市)

金融業を営むうえで最も大切な信用は失墜した。福島県のいわき信用組合(いわき市)について東北財務局が同信組と旧経営陣を福島県警に刑事告発し受理された。

金融庁・同財務局は虚偽説明など「協同組合による金融事業に関する法律」違反にあたるとみる。県警の徹底した捜査を望みたい。

同市は3月で丸15年となる東京電力福島第1原子力発電所事故の被災地域で中核の「30万都市」だ。同信組も公的資金の注入を通じた財務支援を受けてきた。

だが、過去の経緯を踏まえれば東日本大震災とはほとんど関係がない点で一連の不祥事は根深い。復興に懸命に取り組む取引先の信用と期待を裏切ったといえよう。

これまでも金融庁は旧UFJ銀行などを刑事告発したことがある。しかし、地方の中小・零細企業の資金繰りを草の根で担う信組に対する告発は異例だ。

いわき信組は1990年代から反社会的勢力の侵食を許してきたとされる。そのほかにも約20年前からの不正融資や横領事案の非公表などが次々と発覚した。すでに金融庁は業務停止命令など行政処分を出したが、事態の深刻さを踏まえ、刑事告発に踏み切った。

金融当局の検査に対し、例えば、重要データが入ったパソコンを職員自らハンマーで壊した、と供述していたが、実際には上司にパソコンを渡していたという。

歴代理事長らが絶対的な権力を握り、ガバナンス(企業統治)の意識や体制が不備だった。10億円規模の資金が反社勢力に流れたとされる。金融庁・財務局が刑事捜査が必要と判断したのは妥当だ。

県内4信組のうち首位を競う規模とはいえ、単独存続の是非さえ浮上しかねない。だが県を代表する金融機関の東邦銀行を含め事業承継に前向きな引受先は乏しい。

金成茂・新理事長は「旧経営陣の責任追及を徹底する。捜査にも全面協力する」と強調する。人口減少など厳しい環境が続く被災地経済を下支えする役割を独自経営で果たせるのかが問われている。

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