米エニースフィアが開発したコーディング支援ツール「カーソル」の画面
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

市場規模が40億ドルに上る「コーディングAIエージェント&コパイロット」は登場してすぐにプレーヤーが固定化しつつあり、上位3社がシェア70%以上を占めている。

AIによるコーディング支援ツール「カーソル(Cursor)」を開発した米エニースフィア(Anysphere)、米レプリット(Replit)、米ラバブル(Lovable)など7社が既に年間経常収益(ARR)1億ドルを達成している。

この爆発的な成長は、ソフトウエア開発の高速化、民主化、コスト削減を果たすこうしたツールのポテンシャルの高さの表れだ。ソフトウエア開発者が新たなツールを積極的に試していることも示しており、解約率の高さや、収益を維持できるかなどの懸念も取り沙汰されている。

それでもなお、リードを維持してARRが10億ドルを超え、減速の兆しが全くみられないプレーヤーもいる。米アンソロピック(Anthropic)が2025年5月に提供を開始し、既に同社の売上高の10%近くを占める「クロードコード(Claude Code)」はその一つだ。

どのプレーヤーが現在首位に立ち、リードを維持する可能性が高いのか。CBインサイツのデータを活用し、この分野の現在の市場規模と各社の推定シェアを割り出した。

AIコーディングの市場シェア、上位3つのプレーヤーで7割。出所:CBインサイツ

主なポイント

コーディングAIエージェント&コパイロット市場は3大プレーヤーを軸に固まりつつある。3社のシェアは計70%以上に上る。マイクロソフトの「ギットハブ・コパイロット(GitHub Copilt)」、アンソロピックの「クロードコード」、エニースフィアはARRがいずれも10億ドルに達し、25年9月の前回調査以降リードを維持している。いずれも法人契約でユーザーを長期間囲い込んでいるため、市場は固定化し、3社の地位は一段と強固になるだろう。さらに、開発者はツールに応じてワークフローやプロンプト(指示文)、コードベースを調整するため、ツールの切り替えコストは高くなり、技術的に大きな差がない限りは同じツールにとどまるだろう。米オープンAI(OpenAI)はAIコーディングツール「Codex」についての情報を一切明らかにしていないが、これは各社のシェアを揺るがす可能性がある。

爆発的成長によりエコシステム(生態系)の拡大と業界再編が進む。開発者の間でAIコーディングツールの導入が急速に進み、推論コスト(AIを利用する際にかかる費用)やコードの質、セキュリティーなど急成長に伴うひずみが生じている。その結果、こうした問題に対処するツールが登場するなどAIソフトウエア開発エコシステムが拡大している。このエコシステムは既に再編の好機を迎えているようだ。アンソロピックはJavaScriptランタイムツール「ブン(Bun)」、エニースフィアはAIコード評価ツール「Graphite」を取得するなど、25年12月には主要プレーヤーによる買収が相次いだ。

企業価値が売上高の何倍かを示す「売上高マルチプル」の上昇は、投資家の上位勢への信頼の表れだ。エニースフィアとラバブルは25年後半、売上高のそれぞれ30倍と33倍の企業価値で資金を調達した。年初の20倍と18倍から大幅に上昇した。この売上高マルチプルの上昇は、市場の急成長によりこうした企業の解約が増え、大規模言語モデル(LLM)開発企業の参入で利益率が低下するのではないかと懸念されていたが、リードを維持できるとの投資家の信頼を示している。例えば、ラバブルはARRが26年夏までに10億ドルに達するとの見通しを示している。これは25年の2億ドルの5倍となる。

ラバブル、26年のARRは5倍に増える見通し。出所:CBインサイツ

市場の概要

コーディングAIエージェント&コパイロット市場は、ソフトウエア開発者によるコード作成、修正、テスト、保守をAIで支援するソリューションから成る。こうしたツールはAIによるコード補完、自然言語でのコード生成、自動テストやチェック、エラーやバグの修正、スピーディーな開発に伴い将来発生する可能性があるコスト(技術的負債)の管理などの機能を提供する。多くのツールは統合開発環境(IDE)などに組み込まれているが、独立型のエージェントや対話インターフェースとして動作するツールもある。汎用のコーディング支援ツールと、特定のプログラミング言語やフレームワーク、開発ワークフロー専用の特化型ツールがある。

この市場には約130社近くが存在している。まだ商業成熟度が低い専業企業(約40%)、エニースフィアやラバブルなど最近ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の地位に達した企業、主なLLM開発企業、大半のテック大手などが参入している。

この市場の企業による25年のエクイティ(株式)による資金調達総額は約52億ドルと、前年の20億ドルの2倍以上に増えた。平均モザイクスコア(企業の健全性を示すCBインサイツの独自スコア)が594点と未上場企業全体の平均370点を大きく上回っている点も、この市場の勢いを示している。

コーディングAIエージェント&コパイロットの調達額、2年連続で2倍以上に。出所:CBインサイツ

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