キオクシアHDの次期社長の太田裕雄副社長執行役員(右)と早坂伸夫社長(29日、東京都中央区)

キオクシアホールディングス(HD)は29日、太田裕雄副社長執行役員(63)が4月1日付で社長に就任すると発表した。早坂伸夫社長(70)はシニア・エグゼクティブ・アドバイザーとなる。人工知能(AI)向けにメモリー半導体の需要が伸びるなか、新体制でシェア拡大を図る。

太田氏は6月の定時株主総会を経て代表取締役に就任する。早坂氏は2020年に前社長だった成毛康雄氏の病気療養に伴い社長に就任した。

同日都内で開いた記者会見で太田氏は「生成AI向けの要求は非常に強い。高性能・低消費電力のメモリー開発に取り組み、製品開発を加速したい」と意気込みを語った。

太田氏は早坂氏と同じくキオクシアの前身企業である東芝の出身だ。メモリーやソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の開発に長く携わり、英国駐在など海外での営業経験もある。早坂氏は太田氏の起用について「技術に精通し幅広い知見を持っている。顧客やパートナーと関係を構築できており市場競争に勝ち抜いていける人材だ」と話した。

キオクシアは17年に米原発事業の損失で経営危機に陥っていた東芝から切り出されたメモリー事業を前身に持つ。18年6月に米投資ファンドのベインキャピタルが約2兆円で買収した。24年12月に東証プライム市場への上場を果たした。業績拡大への期待からキオクシアの時価総額は直近で10兆円の大台を超え、上場から1年あまりで11倍に膨らんだ。

キオクシアは米サンディスクコーポレーションと共同投資し、三重県と岩手県の工場で生産している。23年までに両社で経営統合に向けた交渉を複数回進めたが、いずれも条件がまとまらず破談になった。太田氏は経営統合についての質問に「株価は非常に上がっている。すぐ何かアクションを取る必要性は個人的にはないと思っている」と答えた。

半導体市場は成長のけん引役がスマートフォンやパソコンから、生成AIの計算処理に使うデータセンターに移った。キオクシアは生成AIの計算結果を保存するNAND型フラッシュメモリーで世界3位だ。29年度までにNANDの生産能力を記憶容量ベースで24年度比2倍に高める目標を掲げ、北上工場(岩手県北上市)でAI用メモリーの増産に入った。シェアで先頭を走る韓国サムスン電子や韓国SKハイニックスを追う。

ただ汎用品のNANDは供給が需要を上回ると価格が下落しやすい特性があり、アクセルとブレーキのバランスが難しい。太田氏は「規律ある設備投資を継続する。生成AIの活用やスマートファクトリー化で生産効率を高めたい」と話した。

経営の独立性を高めることも課題だ。キオクシアには現在もベイン系の複数の特別目的会社(SPC)が計44%出資し、実質的な筆頭株主だ。SKもベインのSPCを通じてキオクシアに間接出資している。現在も取締役会の6人中2人がベイン出身者だ。

キオクシアはベインに対し早期に持ち分を売却するよう要請している。太田氏は「短期間で(状況に)変化は起きないのではないか。対話をしっかり増やして、良好な関係を継続したい」と語った。

(向野崚)

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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