会見で質問に答えるフジテレビジョンの清水賢治社長(30日、東京都港区)

フジ・メディア・ホールディングス(HD、FMH)傘下のフジテレビジョンの清水賢治社長は30日、東京都内で記者会見を開き、人権問題への対応の進捗などについて説明した。テレビ広告が1月に前年同月比93%のペースまで回復していると明らかにした。問題の発覚から1年以上が経過しガバナンス(企業統治)改革を進めたが、なお社員の不祥事などが相次いでおり浸透は道半ばだ。

清水氏は就任1年目について「人権を尊重する会社への再生を最優先で進めた」と振り返り、第三者による監視などの対策が「かなり整った」と語った。

ただ28日にも報道部門の社員による取材・内部情報の漏洩が明らかになり、当該社員の処分を発表した。清水氏はガバナンス改革について「永遠に続く」と述べ、現場の意識改革を続ける姿勢を強調した。

26年は本丸のメディア・コンテンツ事業の再建に焦点が移る。清水氏は「放送からコンテンツ起点の会社に生まれ変わる」として、海外の動画配信大手も指標としながら放送と連動する知的財産(IP)の創出と市場展開に注力するとした。

テレビ広告は取引社数で1月には93%まで回復した。清水氏は4月に控える番組改編の段階では「できる限り100%に戻せるよう全力を挙げて取り組む」と話した。

収益力の改善も急務だ。清水氏は同事業について「利益率が低いことが最大の問題点だ」と述べた。フジテレビ単体の営業利益率は23年度でも2.3%にとどまる。

FMHは今後5年で約1500億円を投じ、IP展開や動画配信の強化を図るとしている。25年12月には自動車レース「フォーミュラ・ワン(F1)」や、26年サッカーワールドカップ(W杯)の放映権も得た。清水氏は集客力のあるコンテンツを充実させつつ「独自IPをどれだけ立ち上げられるかにかかってくる」と強調した。

競争力の源泉となる制作費は、24年度でも710億円にとどまった。民放キー局で4番手でトップのTBSテレビの7割の水準だ。25年上半期は人権問題の影響で経費を絞り、前年同期比で2割減とさらに縮小している。清水氏は26年度も「放送収入の回復が見通せず抑制的にやっていく」とした。

FMHでは村上世彰氏らが関わる投資会社レノ(東京・渋谷)や長女の野村絢氏が不動産事業の再編、自己資本利益率(ROE)の改善を迫る。清水氏は30日の会見では不動産事業の再編について明言は避けた。「(33年度を目標とする)ROE8%の実現のために最適なポートフォリオを探さなければならない」と従来の方針を繰り返した。

清水氏は25年1月、人権問題で引責辞任した港浩一前社長の後任として社長に就いた。6月からはFMHの社長も兼ね、ガバナンス改革を主導した。業務優先の企業風土の是正や編成・制作組織の再編を進め、役員定年の厳格化やリスク評価の体制にも取り組んだ。フジテレビは港氏と大多亮元専務に対して人権問題の対処を巡る法的責任を追及するため、損害賠償請求訴訟を起こしている。訴訟は継続中だ。

清水氏はFMH社長との兼務について、両社間の連携や改革の推進など「有事対応を進めるには(兼務が)適している」と述べ、解消の判断は「(会社が)普通の状況になってから考えられること」と述べた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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