人口推移から経済統計まで
昨年12月に歴代最年少で福島市長に就任した馬場雄基氏(33)。市長選の公約として掲げ、最優先課題として就任100日以内、すなわち今年度中の公表を目指しているのが「データブック」だ。人口推移から経済統計まで市内のあらゆるデータをグラフなどで可視化して「市民目線の街づくり」を進めるための「全ての政策の基本」にするという。どのような本なのか。馬場氏が参考にしたという先進地を訪ねた。【錦織祐一】
馬場氏は昨年12月の就任記者会見で、最優先とする3項目の中でも真っ先に「データ行政の確立」を掲げた。その手段として「若者人口の減少や財政調整基金の状況などあらゆる数字を(市職員らと)共有しなければ正しい判断はできない。就任100日以内に福島市の強みも弱みも一望できるデータブックを確立し、そのデータをすべての政策の基本とする」と説明した。
具体的には、過去の推移が分かる折れ線などのグラフや、どの地区にどんな特徴があるかのマッピングをイメージしているといい「年度末で多くの予算はないが電子版ならすぐ(市のウェブサイトに)載せられる」と強調。特に「次世代文教都市」を掲げる馬場氏は「中学生でも分かる中身を作り上げたい」と若年層の街への関心の高まりを期待する。
郡山市を参考に
馬場氏が参考にしている先進事例の一つが、福島県郡山市だ。2013年に就任した元郵政官僚の品川万里(まさと)前市長(81)が統計に力を入れ、翌14年からデータブックを作成している。担当する市政策統計課が毎年度末に各部署にデータ提供を呼び掛けて、3カ月ほどをかけて編集し7月ごろに完成する。22年版からは各項目が国連の持続可能な開発目標(SDGs)のどの目標達成に関係するかも紹介している。
25年版はA4判67ページ。項目は150に上り、年齢別人口や産業別就業者数から市ウェブサイトのアクセス件数、町内会加入率まで多岐にわたる。郡山の街の強みや特徴を直感的に理解できるよう、県内の3大都市である福島、いわき両市と比較する項目や、コイ生産量など日本一、人口や域内総生産など県内一のリストなど、多彩な角度から「街の姿」を浮かび上がらせる。
郡山市政策統計課の石井章浩課長は、根拠のない政策を排して政策効果も検証できる手法「EBPM」(証拠に基づく政策立案)を進められ、移住・定住促進や企業誘致など対外アピールの資料にもなっていると評価する。
石井課長は「職員が(計画・実行・評価・改善を繰り返す)PDCAサイクルの中でデータを見るという意識付けに確実になっている。毎年更新することで現状をアップデートし続けるという意味もある」と強調する。
同県田村市は23年度からデータブックを公表。製本はせずホームページ上で公開している。担当する市総務課は本来業務と並行して半年をかけデータを各部署から収集して編集し、24年版は52ページにまとめた。担当者は「別々にあったデータを集約して見える化したこと自体に意味がある。すぐに何かが変わるというものではなく情報インフラとして整えるべきもの」と説明する。
遠藤哲哉・福島学院大教授(自治体経営)は「情報の公開・共有を前提としたデータの集積と構築は、市民に寄り添う市政の基盤。対話のための手段だ」と評価した上で「データには表れにくい伝統や歴史、地域性を丁寧にすくい上げることも重要で、その上にデータを重ねて関係を構築してほしい」と指摘した。
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