
京都大学などの研究グループは、難病に指定されている「特発性肺線維症(特発性間質性肺炎)」の治療の標的となるたんぱく質と薬剤の候補を特定した。ヒトiPS細胞から作製したオルガノイド(ミニ臓器)をもとに病態を再現し、病気の進行を抑える化合物を探した。新たな治療の選択肢となることが期待される。
研究成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
特発性肺線維症は肺胞の壁が線維化し厚く硬くなることで、酸素の取り込みが難しくなる進行性の病気だ。発症原因は分かっていない。線維化を遅らせる薬剤もあるが、病気の進行を完全に止めたり、失われた機能を回復させたりすることは難しい。
肺線維症の患者では、肺胞の上皮細胞の一種が異常な細胞に分化することが知られており、この状態が肺の線維芽細胞を過剰に刺激して、さらに肺の線維化が進む悪循環が起きているとみられていた。ただ体内で線維化が進む過程はよく分かっておらず、創薬研究の壁となっていた。
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の後藤慎平教授や筒井優介研究員らのグループは、ヒトiPS細胞を使って肺胞細胞が異常な状態に分化し、線維化が進む病態を精密に再現することに成功した。この病態モデルを使い、線維化を抑える薬剤を探索した。
すると「p300/CBP」というたんぱく質の働きを阻害する薬剤が、線維化を抑制する可能性があることが分かった。このたんぱく質がどのような働きをしているのかを調べるため遺伝子を解析すると、肺胞の上皮細胞を異常に分化させる司令塔として機能していた。
肺線維症の病態を再現したマウスに今回、特定した化合物を投与すると線維芽細胞の活性化を抑えることができたという。後藤教授は「動物や、患者の組織をiPS細胞で代用できることを証明できた」と創薬研究でiPS細胞を使うことの有用性を話した。
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