「米ありません」の張り紙をはがし、顧客にあいさつする「まつもと米穀」の松本泰さん(左)=京都府舞鶴市引土で2025年9月2日午前10時、塩田敏夫撮影

 京都府舞鶴市引土の老舗米穀店「まつもと米穀」が2日午前10時、営業を再開した。「令和の米騒動」で米の仕入れができなくなり、3月から閉店していた。「待っていたよ」と声を掛けられた3代目社長の松本泰さん(52)は目を潤ませながら「米の付加価値を高め、地域で必要とされる店を目指します」と決意を新たにしていた。9月中は無休で営業する(午前10時~午後6時)。

 午前10時、炎天下の中、二十数人が営業再開を待っていた。松本さんは正面シャッターの張り紙「米屋ですが 米ありません 良質な米が安定供給できるまで店を閉めます ごめんなさい」をはがし、「ありがとうございます」と顧客に深く頭を下げた。店頭には京都産コシヒカリの新米などブランド米が並んだ。

 創業90年の「まつもと米穀」は舞鶴市内では最大の米穀店だが、「令和の米騒動」の大波で必要量の米を仕入れられなくなり、3月24日にやむなく閉店した。この間、松本さんは東北地方を回るなど必死に仕入れ先を開拓し、良質の米を安定的に供給できるめどをつけることができた。しかし、新米の高騰でし烈な競争が続いており、「これからが大変です」と気を引き締めていた。

 営業再開と同時にカフェを開店した。米穀店内の一部を改装し、米粉を使ったワッフルなどを提供する。米の付加価値を高めることが目的で、近くランチも始める予定だ。

営業を再開し、米を買い求める人たちでにぎわう「まつもと米穀」の店内=京都府舞鶴市引土で2025年9月2日午前10時20分、塩田敏夫撮影

 松本さんは「なんとかここまでこぎつけることができた。お客さんにじかに触れることで商売の原点に立ち返った思い。お客さんに温かい言葉をかけていただき、さらにいいものを届けたいという思い、商売人としての使命感を感じました」と語った。

 「令和の米騒動」については「今、転換点に立っているのでは。安く売ることだけに流れると、力のある者だけに収れんし、世の中は先がなくなってしまう。価値のあるものをきちんと評価することが大切。米の価値を多方面から高めるため、知恵を絞っていきたい」と語った。

 午前9時過ぎから開店を待っていた近所の女性(80)は「この店のお米はおいしく、ずっと待っていた。閉店の間はスーパーに買いに行っていたが、品切れの時もあって本当に困った。米農家もちゃんと収入があるようになり、若い人が農業を継げるようになってほしい」と話した。【塩田敏夫】

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